実に6年ぶり(!)なのですが、また本を書かせていただきました。今回は「感情労働」がテーマの本です。
発売日は4/30です。帯および本文のイラストは、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』と同様に、深川直美さんに描いていただきました。今回も、とてもユーモラスで素敵なイラストをありがとうございます!
見本が届きましたので、書影を掲載します。Amazonだと帯の写真が掲載されていないのですが、実物はとてもいい感じです。
これまでも本は3冊ほど出させていただいていますが、今度の本ではまた新しいテーマに挑戦させてもらっています。「働き方」という根底の部分は過去作とも共通していますが、今回は「感情労働」といういま日本で問題になりつつあるテーマを、様々な角度から深堀りしています。
もしかしたら、「感情労働」と言われてもピンとこない人もいるかもしれません。そういう人のために簡単に説明すると、感情労働とは「感情の抑制や忍耐などを不可欠の職務要素とする労働」のことです。具体的には、接客業全般や看護師・介護士などが、感情労働の代表職種だと言われています(なお、本書ではあえて感情労働の該当範囲を少し広めに取るようにしています。一般的なオフィスワーカーも、本書では感情労働をしているものとして扱っています)。
肉体労働が「肉体を使ってする労働」であり、頭脳労働が「頭脳を使ってする労働」のことであることから派生的に考えれば、感情労働とは「感情を使ってする労働」のことだと言っても良いでしょう。感情労働は、肉体労働、頭脳労働に続く第三の労働形態だ、などと言われることもあります。
そんな「感情労働」ですが、近年、日本ではいろんな意味でこの概念への注目が集まりつつあります。オリンピックを誘致する過程で、日本が「おもてなし」を世界へのアピールポイントにしたことからわかるように、日本のサービス水準は世界的に見てもトップクラスです。飲食店に入れば、決して高いお給料をもらっているとは言えない店員さんが、笑顔で非常に質の高い接客をしてくれます。このことはサービスの受け手から見れば良いことのように見えますが、視点を変えてサービスの提供側から見れば、それだけ働き手への「感情労働」の負担が高まっているとも言えます。
中には店員が立場的に言い返せないことを逆手に取って、店員に暴言を吐いたり、理不尽な要求をする非常識な客もいます。こういった非常識な客が相手でも、店員は基本的に無理やり笑顔を作って対応をしなければなりません。タイトルの『はい。作り笑顔ですが、これでも精一杯仕事しています。』という言葉は、そういった「現場の叫び」を反映させたものです。
本書を書き上げた時点では、世界がこんなにも新型コロナウイルスに翻弄される状況になることは想定していなかったのですが、その後の流れを見ている限りでは、コロナ禍の影響で感情労働に従事する方たちの負担はますます増えているように思われます。SNSでも、ドラッグストアやコンビニなどの小売店の店員さんや、医療関係の仕事に従事している方々などの悲惨な叫びを毎日のように目にします。
そういう意味では、奇しくも今の日本に必要な本を出すことになったのではないか、とも思っています。緊急事態宣言下で本屋の多くが閉まっているという、純粋に売る側の視点から言うとかなりの逆境下での出版になってしまったのですが、オンライン書店では購入できますし、Kindle版もありますので、どうかお手に取っていただけますと幸いです。
Kindle版↓