本屋に行くと、就活関連の本が山積みになっている。この手の本は、「内定」を取ることを就職活動のゴールであると定義して、そのための対策だとか心構えだとかがたくさん載っている。
確かに、内定がひとつの区切りであることは事実だ。希望の企業から内定を貰えば、とりあえず入社するまでは、もう面接やエントリーシートに追われることはない。
しかし、希望の企業の内定を獲得したとしても、その先に明るい未来が必ず待っているとは断言しがたい現実がある。むしろ、本当に怖いのはここからなのだ。
例えば、いざ入社してみたら、同期の中で自分だけがブラックな部署に配属されて、労働基準監督署も呆れるくらいの重労働に従事させられるかもしれない。そこまではいかなくても、ものすごく嫌な上司や先輩の下で働かされるなんてことは普通にありえる。いざ入ってみたら、会社の雰囲気が自分と全然合っていなくて、毎日会社に行くのが辛くなってしまうかもしれない。他にも、入社する前は予想もしていなかった事態に陥ることは別に珍しいことじゃない。
実際、内定者の頃はすごく顔色がよかったのに、入社した途端、全身から生気が消え失せ、生きる屍のようになってしまった、という人は少なくない。就職によって、学生の頃とは全然違った性格になってしまう人だっている。内定は、そういった恐怖への入り口でもあるのだ。
このように、内定を獲得したとしても、その先にはきっといろんな罠が潜んでいる。そして、その罠にあなたが嵌る確率は決して低くない。新入社員の3分の1は3年以内に辞めているのだ。自分は大丈夫だ、などとは思わないほうがいい。
こういうわけだから、僕は内定を取った大学生に、卒業までの半年ないし一年で、保険をかけることをおすすめしたい。
保険というのは、実際の生命保険や医療保険のことではなくて、内定後、仕事を続けるのが辛いという事態に陥った時に、すぐに会社を辞めてもなんとかなる逃げ道のことだ。独立可能な資格を取るとか、起業できるだけのスキルを身につけるとか、あるいは養ってくる恋人を作るとか、内定先の会社に依存せずに生活できる手段を構築できるならなんでもいい。会社一本に人生を賭けるのは、ポートフォリオとしては非常によくない。
前にも書いたが、間違っても、内定先でのアルバイトなんかに時間を使ってはいけない。会社に時間を使うのは、入社した後に嫌というほどできる。
内定を取ったら、もう一歩頑張って、撤退ルートも確保しよう。そうすれば、社畜になってしまう前に、自分を保って逃げることができる。
- 作者: 中野貴利人
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