専門学校や、一部の私立大学は、学生を集めるために就職率の高さを全面に出す。専門学校はともかく、大学がこうやって学生集めのために、本来の役割を忘れて就職支援に必死になること自体に僕は大きな疑問があるのだが、今回はそれについては横に置いておく(詳しくは「大学は就職予備校ではない」を参照してほしい)。僕が今日書きたいと思っているのは、これらの就職支援が全く支援になっていない、という話だ。
専門学校や私立大学が行う就職支援の目的は、明確に「学生集め」である。高校生向けの入学案内や、広告には就職率◯◯%という指標が大々的に掲げられる。100%を謳っている学校も少なくない。
この100%という数字が、実際には100%ではないというのは有名な話だ。就職の見込みがない学生を事前に留年・退学させたり、コンビニのアルバイトですら就職にカウントするなど、あらゆる手を尽くして100という数字を達成しようとする。この数字達成のための手段はそれこそ色々あって、分母を就職意思のある学生だけに限定する、1人の学生が複数の内定を取ったら複数人分カウントする、家事手伝いも職業としてカウントする、など冗談だと思われるようなことが結構平気で行われている。
こんなわけだから、学生がどんな企業に就職するか、といった点はほとんど重要視されない。とにかく、どこかに入れることだけが至上命題である。ブラック企業であろうとなんであろうと、とにかく就職さえしてくれれば学校としてはもうそれでよいのである。学生が就職した後にブラック企業で体を壊そうと、精神を病もうと、そういうことには一切学校は感知しない。学生の将来なんて、学校側は微塵も考えてはいないのである。
これで「就職支援」を謳ってしまうのだからお笑いである。就職は、すればいいというものではない。本当の意味で就職を支援しようと思うのであれば、「入ってはいけない企業」についての情報も当然学生に共有すべきだし、就職後の追跡調査などもしっかり行うべきである。ここまでやって、はじめて「就職支援」をしていると言えるはずだ。
他人の人生に干渉しようと思うなら、それなりの真剣さで望むのが筋である。中途半端な支援は、逆に学生を不幸にする。学校で学生の進路を指導する立場にある人は、このことをしっかりと心に刻んで欲しいと思う。
- 作者: 森岡孝二
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