今はこんなブログを書いているが、白状すると、僕も学生時代に就職支援セミナーなるものに一度だけ参加したことがある(もっとも、自分から行こうと思ったのではなく、友人の強い誘いがあって、完全に興味本位で参加したのだが)。今日は、その時の話について書こうと思う。
このセミナーは、なんというかえらく傲慢なタイトルが付けられていたような気がする。おぼろげな記憶をたどってタイトルを雰囲気で再現すると、「商社・外資コンサル・外資系金融を目指すハイレベル就活生のための就活必勝セミナー」みたいな感じだっただろうか。「ハイレベル就活生って何だよ」とか、色々と突っ込みどころ満載なのだけど、今もこれと似たような名前のセミナーは全国いたるところで開催されているようである。
おそろしいことに、このセミナーに参加するためには、400字程度の作文を提出し、選考に通過しなければならなかった。もうこの時点で何度も辞めようかと思ったのだけど、選考をするほどの就職支援セミナーというものがどんなものなのか知りたいという気持ちもあり、適当に意識高そうなことを400字くらい書いて提出したら、参加できることになった。
当日、会場に行ってみてまず驚いたのは、参加者の3分の1くらいの人間がスーツを着ていたことである。そして、なんかやたらハイテンションな感じで「マッキンゼー」がどうとか、「ボスコン」がどうとか、そういう話ばかりしている。僕は、「帰りたい」という気持ちを抑えて、受付を済ませて席についた。
セミナーが始まると、「外資系コンサルの内定者」を自称する人達が次々と現れ、各々就活についての持論を展開しはじめた。内容はネットなどで調べればすぐに分かるような内容か、独断と偏見に満ちたおよそ一般化することは不可能であるような内容で、正直これを聞いても就活必勝には程遠いと思わざるを得なかった。しかし、周囲を見回すと熱心にメモを取っている人たちも数多くいる。登壇している内定者に、憧れの眼差しを送っている人もいたと思う。僕は一応最後までいたけど、閉会と同時に即効で席を立ち、もう二度とこのような集まりには行くまいと決心した。
この手の就職支援セミナーは、今も頻繁に行われているようだが(大学3年生や大学院修士1年生の元には、Facebookなどを通じてこの手のセミナーのお誘いがよく来ると聞く)、行ってもほとんど就職活動の役には立つことはない。特に、内定者が主催し、後輩の就活生にアドバイスをしようというタイプのセミナーは、ただの内定者自慢大会になっている場合が多いので行かないほうがよい。
そもそも、内定者が自分で分析した内定の理由と、企業がその人に対して内定を出した本当の理由は一致しない。内定者はどこまで行っても内定者であり、その会社の実際の業務を経験したわけではない以上、会社がどのような人を求めていて、どういう基準で採用を行なっているかを正しく知ることは不可能である。内定者は、就職活動のアドバイスを求める対象としてはあまりよいとは思えない。
そもそも、後輩に頼まれて仕方なくアドバイスをするならまだしも、特に誰から頼まれたわけでもいないのに自分からアドバイスをしようと出しゃばってくる内定者が傲慢で鬱陶しい人間であることは容易に想像がつく。こういう人達と付き合って無駄なエネルギーを消費するのはなるべく避けるべきである。
全国の就活生諸氏が、このようなセミナーに意識を乱されないことを切に願う。
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