脱社畜ブログ

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真のロジカルシンキングを獲得するために:『論理トレーニング101題』

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ビジネスの場ではロジカルシンキングが大事だと言われる。別に、ビジネスに限らず、論理的に物事を説明したり、考えたりすることはとても重要だ。論理を欠いた文章には説得力が無いし、自由奔放に考えているだけでは、解決策にはなかなか辿りつけないということもある。

 

コンサル志望の就職活動生や意識の高い若手社員などは、特にロジカルシンキングの習得に熱心だ。こういう人達に人気があるのは、たとえば次のようなコンサルタントが書いた、ロジカルシンキングの本だ。

 

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)

 

この手の本では、ロジカルシンキングを明確な「スキル」として捉え、「ロジックツリー」や「MECE」といった、ロジカルに考えたり説明したりするための道具を紹介してくれている。これはこれで、確かに役に立つとは思う。

 

しかし、こういう本を読んだだけで、真に論理的な人になれるかというと、かなりあやしいと言わざるをえない。実際、MECEに物事を分解したり、ロジックツリーを書いたりすることは達者にできるものの、どうも言っていることがズレている、という人は結構見かける。こういった人たちは、ロジカルシンキングの道具に振り回されてしまっている。いくらロジカルシンキングの道具とその使い方を学んでも、それだけで論理的な人になることはできない。本当の意味で論理的に考える能力を身につけるには、もっと別なトレーニングが必要だ。

 

そして、そのトレーニングの教材として僕が最もお薦めしたいのが、『論理トレーニング101題』(野矢茂樹だ。

 

論理トレーニング101題

論理トレーニング101題

 

コンサルタントが書いたロジカルシンキングの本と違って、この本には、MECEもロジックツリーも出てこない。代わりに、正しい接続表現を選択したり、議論の骨格をつかまえたりすることについて、101題の演習問題を通じて学ぶことができる。いわば、一切ごまかしなしの、王道のトレーニング書であり、真の意味でのロジカルシンキングを身につけるにはもってこいの本だ。

 

なんだか難しそう、と思っている人も安心して欲しい。野矢先生の文章は非常にわかりやすく、飽きさせないので101題やり終えるのはそれほど苦ではないはずだ。万が一途中で挫折しても、やった分だけの力はつく。

 

ためしに、冒頭から1問引用してみよう。あなたは、以下の文章から論理的におかしいところを見つけることができるだろうか。

 

「清潔はビョーキだ」の著書がある東京医科歯科大の藤田紘一郎教授(寄生虫学)も、座り派の増加について「清潔志向が行きすぎてアンバランスになってしまっている」と指摘する。「出たばかりの小便は雑菌もほとんどいない。その意味では水と同じぐらいきれいだ。なんで小便を毛嫌いするのか。ばい菌やにおいを退けすぎて、逆に生物としての人間本来の力を失いかけている一つの表れでないといいのですが」
朝日新聞、2000年3月26日付朝刊)

 

おかしいところがわからなかったという人は、ぜひこの本を読んでもらえればと思う。101題を終える頃には、この文章の変なところを指摘できるような、論理の力がついているはずだ。

 

余談になるが、僕は大学でこの本のご著者である野矢茂樹先生の講義を受けたことがある。ものすごくわかりやすく、かつ、面白い講義だった。大学に入って一番最初に受けた講義が野矢先生の講義だったので、これで「大学ってのはすごいところなんだなぁ」という印象を抱き、他の先生の講義に対しても多大なる期待をもって挑んだのだが、大学4年間を通して、野矢先生を超える人が現れなかったのはなかなかの皮肉である。

 

野矢先生が冒頭に書いているが、解説書なんかいくら読んだって、論理の力は鍛えられない。ただ実技あるのみである。真のロジカルシンキング能力が欲しい人は、ぜひこの本で、力をつけてもらえればと思う。