脱社畜ブログ

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片山さつき(と自民党)は日本全体をブラック企業に変えるつもりなのか

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片山さつき氏の以下のツイートが、話題になっている。

 

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「前文にしました!」じゃねえよ、と言わずにはいられない。

 

このツイート内容の時代錯誤さに、僕は開いた口が塞がらなくなった。「人権は、人が生まれながらにして持つ当然の権利であり、いかなる場合も剥奪されない」という天賦人権説の真っ向否定である。天賦人権説は、近代的な人権思想のコアと言ってもよい。天賦人権説を否定するということは、人類が闘争の末に獲得してきた人権思想そのものを否定するのと同じことだ。片山氏は、日本を近代以前に戻そうという考えであるらしい。さらに驚くのは、これが片山氏独自の考えというわけではなく、自民党の公式見解でもあるということだ(自民党改憲案Q&A:Q2・Q13)。

 

天賦人権説を否定し、「権利が当然に付与されるものではなく、義務を果たして初めて付与される」と考えると、先進国家とは思えないような理不尽な状態が多く生じることになる。例えば、病気などのやむにやまれぬ理由で国家の定めた義務を果たせない人の人権は、剥奪されることになるのだろうか。また、義務を果たした・果たしていないという判断が国家によって恣意的になされるとすれば、これを逆手に取った人権制限が横行するおそれがある。このような考えを公式に採用しようとしている政党が次の選挙で政権政党になろうとしていると考えると、いよいよ日本の未来は暗いと言わざるをえない。

 

この片山氏や、自民党憲法改正草案のベースになっている「権利ばかり主張しないで、まずはしっかり義務を果たしてからモノを言え」という論理は、どこかで聞いたことがないだろうか。そう、ブラック企業でよく用いられる論理である。有給を取ろうにも「まず義務を果たせ」と脅され、会社の言う「義務」を果たすためにサビ残・休出といった契約外の強制労働に従事することになる。この場合、何が義務かという点については会社によって恣意的に決められ、権利行使をしようとすると、すぐに義務を果たしていないことを理由に行使が制限される。ブラック企業における仕事はこのように前近代的だが、これを日本という国全体に広げようとしているのが今回の片山氏の発言・自民党憲法草案ではないかと思ってしまう。言ってしまえば、片山氏(と自民党)は、日本という国そのものをブラック企業に変えるつもりだ。こんなの絶対に是認できない。

 

片山氏の発言と、ブラック企業が用いる論理に共通するのは、いずれも権力者目線での物言いだということだ。これらの意見には、国民一人ひとりや、労働者一人ひとりについての想像力が大きく欠如している。上に立つものが、それでいいのかと言いたくなる。それとも、政治や経営というのはそもそもがそういうものなのであろうか。そうだとしたら、とても悲しいことである。

 

今度の衆院選では、民主党がみっともなかったので自民党に入れようと思っている人も多いことと思う。しかし、自民党もまたこんなとんでもない政策を提言してきている。次の選挙は、どこに入れればいいんだろうか。正直、詰んだというのが僕の心境である。日本の政治の迷走は甚だしい。「まともな」政党・政治家の登場を切に願う。

 

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追記:

「権利行使に、義務が伴うのは当然だろ」と思った方はこちらもどうぞ。

 

政治のことよくわからないまま社会人になってしまった人へ (増補改訂版)

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