脱社畜ブログ

仕事観・就職活動・起業についての内容を中心に、他にも色々と日々考えていることを書き連ねていきます。

「現実的ではない」の一言で法を軽々しく飛び越える人たち

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Q&Aサイトの教えて!gooに、こんな残念な質問が掲載されていたことを昨日見つけた。

 

一般職が有給休暇取りすぎて困っています。
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/7814694.html

 

質問者の考え方が間違っている、という話はこのブログの過去記事をいくつか並べるともうそれでおしまいなのだが(例えば、『有給を取ることは「申し訳ない」ことなのか』『定時で帰宅、有給全部消化で何の問題もない』など)、今回はそれは置いておいて、この質問の以下の部分に着目した話を書きたいと思っている。

 

人事や経営陣に求めて有休完全取得を前提にした人員の用意をさせるというのは現実的ではないので、どうにか一般職に有休取得を減らしてもらう方法はないでしょうか?
強調は日野瑛太郎)

 

この「現実的ではない」というフレーズは、法律を飛び越えるときに結構よく使われるお決まりのセリフだと僕は思っている。例えば、このフレーズを使ってサービス残業について以下のような主張をすることができる。

 

確かに、サービス残業は厳密に言えば違法行為である。しかし、今は会社も大変な時期なので、完全に残業代を払うということは現実的ではない。会社が潰れてしまっては元も子もないので、今は残業代を我慢してくれないか。

 

この主張は理不尽極まりないインチキなのだけど、会社ではこういう言い方でサビ残という違法行為を押し付けるのがよく行われるている。

 

この「現実的ではない」というフレーズは、以前取り上げた「甘えるな」といった頭ごなしに他の意見を押さえつけるフレーズに比べると、割とマイルドな印象を受ける。そう感じられる理由は、見かけ上は反対利益への配慮がなされているような形になっているからだ。

 

「反対利益への配慮」とは何のことだろうか。法学部出身の方はよくご存知だと思うが、一応説明しておこう。例えば、AとB、意見が分かれるような問題に対して議論を行う際に、単に

 

Aである。なぜなら◯◯だからだ。

 

 とだけ主張するのと、反対利益であるBに配慮して

 

たしかに、Bとも考えられる。しかし、☓☓の点でBは妥当ではなく、また、◯◯という理由を考えると、Aである。

 

と主張するのとでは、どちらが説得力があると感じるか考えてもらえばわかりやすい。このように、自分の主張と対立する主張についても言及し、もう一方の意見にも配慮ことで自分の主張の説得力を増させるのが「反対利益への配慮」である。

 

有給取得やサービス残業の例についていえば、頭ごなしに「有給を取得するな」「サービス残業すべきだ」というのではなく、「有給を取得したい」、「ちゃんと残業代を払って欲しい」という反対意見に一応触れている形を取っていることが、説得力があるかのように一瞬見えてしまう。

 

しかし、これは実際には反対利益に配慮できていない。配慮したかのように見えて、実は全然配慮していないというかなり悪どい論法である。決定的に間違っているのは、反対側の主張を、「現実的ではない」の一言で排除している点だ。「現実的ではない」という言葉は、本当に実現不可能なものについて使わなければならない。法律を守ることが「現実的ではない」という主張は、法治国家である日本では到底受け入れられるものではない。

 

法律を守ったり、権利に応えることを「現実的ではない」と言ってくるような人間がいたら、警戒しなければならない。その人は、あなたのことを考えているように見えて、実は全然考えていない。丸め込まれないように、気をつけて欲しいと思う。

 

論理トレーニング101題

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