脱社畜ブログ

仕事観・就職活動・起業についての内容を中心に、他にも色々と日々考えていることを書き連ねていきます。

理系の議論と文系の議論

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理系と文系の本当の違い
http://anond.hatelabo.jp/20130308230002

 

そういえば、僕は文系学問と理系学問について、両方ともそれなりに勉強したことがある。そこで今日は、双方を勉強して僕が感じた「理系と文系の違い」について書いてみようと思う。

 

まず、自分のバックグラウンドの話からすると、僕は工学部出身で、今の仕事もざっくり言えば「エンジニア」というやつなので、これだけ見るとコテコテの理系人間に思える。

 

ただ、僕は昔から理系、理系と言われるのがものすごく嫌で、その反骨心が大学入学後抑えきれない大きさまで膨れ上がったため、2年半ほど司法試験の勉強をしていたことがある。当時はよく工学部の講義をサボって図書館で法律の基本書や予備校本を読んだりしていた。法学部の講義や自主ゼミのようなものにも出た。予備校にも通った。当時は本気で受かろうとして真剣に勉強していたので、勉強をしてこなかった法学部生よりかはよっぽど法律知識があると思う。

 

ワケあって司法試験の勉強をやめた後は、また工学の勉強に本腰を入れた。こんなふうに文・理の間をふらふらとしたことによる損失についての話はともかく、大学生活全体で見ると、工学と法学は大体半々ぐらいの割合で勉強していたのではないかと思う。

 

さて、そんな僕が理系と文系の両者の学問に触れて「これは決定的に違うな」と思ったことが1つある。それは、「議論の仕方」だ。「議論の決着のつき方」と言ったほうが適切かもしれない。

 

理系の学問では、ある事象について見解がわかれた場合には、実験結果や数式の操作によって白黒をつけようと試みる。ここで強調されるべきなのは、理系の学問が「客観性」と「再現性」に重きをおいているということだ。例えば、ある現象を正しいと判定するために、価値を持つのは客観的なデータである。「誰の目に見ても正しい」こと、そして「誰がやっても同じ結果になること」をもってして、議論に決着をつけることが基本になる。理系学問には、権威主義はほとんどない。偉い教授が提唱した説でも、実験結果が否定すればその説は消える。理系の人には当たり前に思えることかもしれないが、理系の議論は正しい人が勝つ。

 

一方で、文系の学問では、ある論点について完全に白黒をつけることが難しい場合があまりにも多い。僕が法学を勉強し始めて最初に驚いたのは、基本的なトピックについても「通説」とか「有力説」とか色んな争いが生じていて、しかもそれらは客観的にどちらが正しいとは言いようがないことばかりだったことである。例えば、「永住外国人地方参政権をあたえて良いか」という論点があって、これには「要請説」(=あたえるべき)、「許容説」(=あたえてもよい)、「禁止説」(=あたえてはダメ)といくつか説があるのだけど、どの学説を選択するにしても、それが理系学問のような「誰の目に見ても正しい」といったレベルで支持されるのは難しい。それぞれの学説に、それなりに説得力のある理由付けがあるからだ。結局、議論の帰趨は論者の「価値判断」や「権威主義」によってしまう。文系の議論では、必ずしも正しい人が勝つとは限らず、そもそも文系学問のテーマ自体が白黒はっきりさせようのないことであったりもする。

 

まとめると、理系の学問では基本的「真実はいつもひとつ」であり、この真実が客観的に明らかになった場合には、もはや反論する余地はなくなる。一方で、文系の学問ではそもそも「真実を決めようがない」ものがテーマになっていて、論者は一応論拠を出しあったりするものの、根底にあるのは価値判断や権威であり、論争はいつまでも続く。

 

ここまでざっくり「文系」「理系」と書いてしまったが、もちろんこれらが完全に当てはまるかは学問分野による。このように学問を文系・理系で二値に分離することにそれほど意味があるとは思わないけど、両者の議論の仕方について大きな違いがあるということは、知っておくと双方の理解が深まるのではないかと僕は思っている。例えば、理系の人が文系的議論に巻き込まれると白黒はっきりつかない言い争いにうんざりすることがあるだろうし、あるいは文系の人が理系の人と議論をすると、あまりにも客観性を求めすぎることについて、冷徹に感じることがあるかもしれない。そういう時は、そもそも議論の仕方が違うということを思い出してみてはどうだろうか。そして、今回は自分がどちらの文脈で議論をすべきなのかを考えてみるとよいだろう。

 

郷に入れば郷に従えとまでは言わないが、相手のやり方を尊重すると有意義な議論ができるというのは、文系でも理系でも変わらない。

 

論理トレーニング101題

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