脱社畜ブログ

仕事観・就職活動・起業についての内容を中心に、他にも色々と日々考えていることを書き連ねていきます。

『ベンチャーファイナンス実践講義』はかなりの良書だった

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言うまでもなく、今の日本経済は資本主義の仕組みによって動いている。資本主義経済では株式会社が中心的な役割を果たすことになるが、この株式会社の仕組みについてしっかりと理解している人は案外少ない。

 

例えば、有名な議論で「会社は誰のものか?」というものがある。これには「経営者のもの」とか「従業員全員のもの」とか、あるいは「社会全体のもの」とか、本当に色々な答えを言う人がいるのだけど、会社法上は明確に「株主のもの」と決まっている。中には「社長」が会社の持ち主で、従業員は全員この社長のために必死に働くという構図を思い浮かべる人がいるけど、これは会社法が採用する「所有と経営の分離」という建前のもとではちょっとおかしい(社長=株主であれば正しいが、これは一般的に言えることではない)。

 

こういった「株式会社の仕組み」については、経営者になるのでもなければ特段知っておかなくてもいいと思うかもしれないが、多くの人が会社という組織で働くことになっている以上は、やはりある程度は理解しておくのが望ましいだろう。「会社」という組織が、資本主義経済においてどのような役割を期待されていて、どのような目的で動いているかを知っておけば、従業員としての自分が会社に対して果たすべき役割、そして果たさなくても構わないことが分かるようになるからだ。

 

そんな「株式会社の仕組み」について知るために、とても役に立ちそうな本を先日読んだのでちょっと紹介したいと思う。ベンチャーファイナンス実践講義』(水永政志)という本だ。

 

 

本書は、ベンチャー企業を立ち上げようとしている起業家向けに書かれたテキストである。大学の講義内容が元になっているようで、その表紙や体裁からは「教科書」という印象を受けると思う。実際、これは「教科書」なのだが、筆者の起業経験などの話から始まって、教科書にありがちな「読んでいて退屈」ということはほとんどない。

 

株式会社や会社法について解説したテキストは数多くあるが、あえて「起業家向け」の本を株式会社の仕組みを知るための本として紹介しているのは、この本が「実戦向け」だからである。法学のテキストではないので、法学徒以外には分かりづらい話や、現実にはほとんどありえないような話は基本的には出てこない。抽象的な説明の後には多くの場合具体例が入るので、もやもやせずに先に進める。

 

本書のカバーする範囲は広く、会社の設立から始まって、経営戦略、会社組織の類型、資本政策、出口戦略、企業価値評価など様々な内容が盛り込まれている。中には、あっさりしすぎて理解しづらいところもあるが、そこはまた別の方法で詳しく調べればよいだろう。「会社を作って、上場させるということはどういうことなのか」をわずか200ページ強で概観できるというのは結構すごいことだ。

 

この本を読んで実際に起業するかは別問題として、一通り読めば「株式会社」が何であるか、そしてそれを作ることでなぜ金持ちになれるのか、といったことがよく分かるようになるだろう。日本にも会社経営で「資産家」になった人たちはいるが、こういう人たちがどういうカラクリで金持ちになったのか、疑問に思ったことが一度でもあるという人はぜひ読んでみるといいと思う。

 

ちなみに、Kindle版もあるようである。ハードカバーの本を持ち歩きたくないという人には、こちらがおすすめだ。