脱社畜ブログ

仕事観・就職活動・起業についての内容を中心に、他にも色々と日々考えていることを書き連ねていきます。

『リーン・スタートアップ』を読んで職業選択について考えた

スポンサーリンク

起業やベンチャーに興味がある方にはお馴染みの『リーン・スタートアップ』を先日読んだ。

 

リーン・スタートアップ

リーン・スタートアップ

 

この「リーン・スタートアップ」のリーン(lean)というのは「無駄のない」という意味で、本書は無駄のない新規事業の立ち上げとそれの拡大について書かれたものである。トヨタ生産方式を体系化したリーン生産方式をスタートアップに応用したもので、起業に興味のある人は間違いなく一読する価値ありな内容だ。

 

そういう点で、本書の第一のターゲットはおそらくベンチャー経営者や企業の新規事業の担当者になると思うのだけど、本書の「リーン」な考え方は、もっと幅広く応用可能だと僕は読了後に感じた。特に就職活動をしている学生や、人生に何らかの迷いを抱いている人は、本書の内容をうまく取り入れられる可能性がある。

 

リーン・スタートアップのコアとなる考え方は、「構築ー計測ー学習」のフィードバックループにある。従来型の起業は、実際の事業化の前に綿密な計画を立てて入念な準備を繰り返し、盤石なプランの元に事業をスタートする。事業の遂行は事前に立てた計画の通りに着実に行われる。一方で、リーン・スタートアップによって提唱されているやり方で重要になるのは、綿密な計画よりも顧客から学ぶことだ。必要最小限の機能のみを搭載した状態での製品リリースを行い、顧客からのフィードバックを受けながら事業内容を柔軟に修正していく。従来型の起業をロケットの打ち上げにたとえるのであれば、リーン・スタートアップは自動車の運転にたとえられる。どっちが成功確率が高いかは明らかだろう。

 

リーン・スタートアップがこのようなやり方を提唱しているのは、起業という行為が「おそろしく不確実なもの」であることに要因がある。顧客が本当に求めているものが何かなんて、ホワイトボードの前で必死に議論をしていても分かるものではない。そうである以上、いったん市場に出してみて、それで顧客から学んだほうが手っ取り早いし効率的な方法である。

 

ここまでは起業の話なのだけど、このように「少しやってみて、それの学びから方針を順次修正してく」というやり方は、おそらく世の中の「不確実性の高いもの」には等しく応用が可能だと思う。僕がまっさきに思いついたのが「職業選択」だ。

 

いざ就職活動をするタイミングになって、学生は必死に自分はどんな職業に向いているだろうかと考え始める。そのために色々な自己分析をやったりすると思うのだけど、はっきり言ってそんなことをいくらやってもピッタリと自分の向いている職業につける可能性は低い。新卒の時点で天職を見つけようとするのは、机上で大ヒット間違いなしの事業計画を練るのと同じぐらいの困難さを伴う。こういう困難な道を行くよりかは、とりあえずその時点でよさそうだと思うところに実験的に就職してみて、それから状況や自分の感覚などに合わせて順次軌道修正(リーン・スタートアップの用語ではこれをピボットと呼ぶ)していったほうがいい。成功した多くの企業が創業当時の計画とは違う事業を営んでいるように、一個人としても、計画通りに全ての事が進むなんて絶対に考えないほうがいい。

 

誤解のないように言っておくと、リーン・スタートアップは「とりあえずやってみようぜ」という乱暴なやり方が全てというわけではない。このような顧客相手の実験の前には事前の検証計画を策定するし、何を学ぶべきか、学んだ後の方針転換はどのようにして行うべきかという点についても理論がある。職業選択に応用する際も、ただ漫然とジョブホッピングしていればいいというわけにはいかないだろう。「構築ー計測ー学習」のフィードバックループで職探しができたら、天職とまではいかないまでも、それなりに悪くない職業に収まることはできそうな気がする。

 

一番の問題は、このような「検証型」の職探しにを日本社会がまだそれほど許容していないことだ。業界にもよるが、「転職回数が多い」というだけで問答無用で低評価をしてくる会社も確かにある。こんなアホな慣習は、さっさとやめたほうがいい。