脱社畜ブログ

仕事観・就職活動・起業についての内容を中心に、他にも色々と日々考えていることを書き連ねていきます。

「やりがい」とは何なのか

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働き盛りの半数近く「やりがい感じられない」 NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130813/k10013744971000.html

 

社団法人「日本能率協会」が行った調査。いろいろと突っ込みたいところが多い内容である。

 

この調査で、「仕事にやりがいを感じない」と答えた人は全体の41.6%であったそうだ。その中でも30代、40代はそれぞれ46.6%、45.2%と他の世代よりも高めだった、とこのニュースは報じている。

 

さて、この数字は高いのだろうか、低いのだろうか。「仕事にやりがいは不可欠」というような価値観に照らせば、半分ぐらいの人が仕事にやりがいを感じられていないという状況は当然よろしくない、ということになるのだろう。

 

この問題を考える上で、まずはっきりさせておきたいと思うのは、仕事の「やりがい」とはそもそも何なのか、という点だ。しかし、これを客観的に定義することは困難だ。もちろん、それっぽい定義をここででっち上げることはできなくもない。ただ、それはあくまでその言葉を定義した人の考える「やりがい」であって、「あなたは仕事にやりがいを感じていますか?」と質問した時に各人が考えている「やりがい」と同じだという保証はない。言ってしまえば、「やりがい」は人の数だけ存在する。このようなフワッとした言葉に関する議論は、多くの場合各々の主観の表明大会になって、なんだかよくわからないところに着地して終わる。

 

言葉通りに解釈しようとすると、「やりがい」というのは「やり甲斐」、つまり仕事の手応えとか達成感ということになるのだろうか。たしかに、こういうものが仕事の中にあれば飽きずに働くことはできるだろう。しかし、あらゆる仕事の中にこの要素を含めるというのは難しい。それなのにも関わらず、仕事と聞けばすぐに「やりがい」と条件反射的に考えるのは、仕事というものの捉え方を歪める原因にもなりかねない。

 

日本能率協会は、今回の調査結果について「収入の伸び悩みがやりがいの低下につながっている」という分析を行なっているが、このように「やりがい」が収入に従属するものだとしたら、ますます「やりがい」とは何なのかよくわからなくなってくる。「やりがいがある」というのは結局、「仕事に満足している」という事象の言い換えなのではないだろうか。だったらはじめから「やりがい」なんてよく分からない言葉を使わずに、そういう聞き方をしたほうがいいのではないかと思わないでもない。

 

「やりがい」というのは便利な言葉で、たとえば「つらい仕事」というのも「やりがいがある仕事」と言い換えれば美しく聞こえるし、「やりがい、やりがい」と連呼することで給料が安いとか法令遵守が行き届いていないとか、そういう問題を覆い隠すことにも使うことができる。個人的には、この「やりがい」という言葉を持ち出すことで労働者が得するようになったことなんてひとつもないと思う。

 

いっそのこと、「やりがい」という言葉を使用するのはもうやめにしてはどうだろうか。「やりがい」について語るのは、「幸せ」について語るのと同じぐらい難しい。「幸せ、幸せ」と言っているとあやしい新興宗教に引っかかりかねないのと同じように、「やりがい、やりがい」と言っているとブラック企業に騙されかねない。「やりがい」という評価軸を絶対視することからの脱却が、これからの働き方を考える上では、不可欠なのだと思う。