脱社畜ブログ

仕事観・就職活動・起業についての内容を中心に、他にも色々と日々考えていることを書き連ねていきます。

子供には自分が「婚外子」になるかどうかなんて選びようがないわけで。

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だいぶ長く時間がかかったが、ようやく非嫡出子の相続分を嫡出子の二分の一と規定する民法900条4号ただし書について、最高裁違憲判断が出た。

 

婚外子」相続差別 最高裁違憲判断
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130904/k10014279131000.html

 

この規定は、前々から「違憲では」と言われ続けてきたものだ。平成7年7月5日の最高裁決定では合憲判断が出たものの、5人の裁判官による反対意見が付され、国会でも改正を求める声が上がっていた。今回の違憲判断は「やっとか」というのが僕の正直な感想だ。

 

さて、この判断についてよくないと思っている方々が結構いるようである。特に、Yahooニュースのコメント覧の内容にはちょっとびっくりさせられる。

 

婚外子相続格差は違憲=「家族形態は多様化」―民法規定めぐり初判断・最高裁大法廷
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130904-00000073-jij-soci
婚外子」相続差別違憲判断に憤慨する人々
http://togetter.com/li/558897

 

言及するのもバカらしいと思うのだけど、とりあえず「中韓がどうのこうの」という話は、本件には全く関係がない。無視していい。

 

「家族制度を破壊する」「これじゃ正妻が可愛そうだ」という意見は、一応検討の余地はある。というのも、今回の違憲判断が出る前の最高裁の見解では、民法900条4号ただし書は法律婚尊重と非嫡出子の保護との調整をはかったもの」と考えられていたからだ。「家族制度がどうのこうの」と言っている人たちは、基本的にはこの旧見解に沿った主張をしているのだと考えられる。

 

ただ、やはりこの手の意見もそこまで筋が通ったものではない。たとえ法律婚尊重する必要性があったとしても、手段として何ら帰責性がないはずの子供に制裁を与えるのは、合理的ではないからだ。

 

法律婚制度を今後もずっと同じ形式で守っていく必要性があるかという話は、ここでは置いておこう。仮に守る必要があったとしても、そのために子供に制裁を課す必要はない。そもそも、子供には自分が「婚外子」になるかどうかなんて選びようがないのだ。こういった生まれながらにして選べない地位に基づく必然性のない不平等な扱いをすることが、差別ではなくてなんなのだろう。

 

「不倫で出来た子供と、本当の奥さんの子供が同じに扱われたら奥さんが可愛そう!」と言っている人がいるが、これはあくまで「子供本人」の話なのである。子供は平等に扱われても、奥さんと不倫相手は、別に法律上平等に扱われるわけではない。そういう意味で、この違憲判断をもってして家族崩壊云々とかいう話をするのは、ちょっと妄想のしすぎである。

 

「子供に罪はないというが、婚外子として生まれてきただけで罪だと私は思う」と言っている人がいて、正直ちょっとおそろしくなった。どうも親に帰責性があれば子供がその報いを受けるのは当然、と本気で思っている人たちがまだまだ日本にはたくさんいるようで怖い。

 

何はともあれ、違憲判断は出た。この調子で、女性の再婚禁止期間(民法733条)も時代に合ったものに見直すといいと思うのだけど、いかがだろうか。

 

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