脱社畜ブログ

仕事観・就職活動・起業についての内容を中心に、他にも色々と日々考えていることを書き連ねていきます。

サービスをつくる側とつかう側は違うよ、という話

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就職活動中の学生を見ていると、志望業界を決める時に、たまに「大丈夫か」と心配せずにはいられないような選び方をしている人がいる。以下にいくつか例を挙げる。

 

  • 自分は旅行が好きだ→旅行業界
  • 読書が好きだ→書店、出版社
  • ゲームをするのが好きだ→ゲーム業界
  • インターネットを使うのが好きだ→インターネット業界

 

この手の職業の選択方法をとると100%不幸になると言いたいわけではない。こういう考え方も、「きっかけ」としてはいいかもしれない。中には、運良く上司や仕事に恵まれて、幸せな職業人生を歩めるという人も、もちろんいるだろう。

 

ただ、多くの人はそういう幸せな結果に終わるとも言えないので、実際にはもう少し冷静に考えてから決めるべきだと僕は思う。単純にこうやって「◯◯をするのが好きだ→◯◯業界」とだけしか考えずに意思決定をすると、いざ仕事をはじめてから「こんなはずじゃなかった」と落胆する可能性が高い。こういう決め方をする人たちに必要なのは、サービスを「つくる側」と「つかう側」の違いをきちんと理解した上で、意思決定をすることだ。

 

例えば、旅行について。自分がサービスを受ける側となってただ単に旅行をするのと、旅行会社の従業員としてサービスを顧客に提供するのとでは、求められる能力が全然違う。旅行するのが好きだという人が、旅行というサービスを他人に提供することにも向いているかというと、そうとは言えない。旅行会社は基本的には接客業なので、そういう方面に適性がないと、いくら旅行をするのが好きでも仕事はつらい業界ということになる。添乗員としてツアーに同行するなら、ツアー参加者がしないこと・できないことを添乗員である自分が率先してやらなければならない。その際には、細かなことに気がつくとか、トラブルに臨機応変に対応するとか、そういう能力も必要だ。こういう能力は、単に旅行が好きだからと言って持ち合わせていると言えるようなものではない。

 

このように、サービスを「つかう側」と「つくる側」には大きな差が存在する。もちろん、サービスを「つくる」にはつかう側の気持ちを理解する必要があるので、「つくる」人が「つかう」ことを好きであることは重要なことでもある。ただ、この逆は必ずしも成立しない。「つかう側」は別に「つくる側」の気持ちなんて考えなくてもいい。実際、消費者の多くは「つくる側」のことなんて気にはしない。それでもサービスを「好き」になることは可能だ。「◯◯が好き」と言っている人の多くは、「つかう側」として◯◯が好きだということに過ぎない。

 

旅行業界を志望するというのであれば、自分自身が旅行好きだというような話はいったん横においた上で、自分が旅行というサービスを「つくる」ことにも向いているのかを冷静に考えたほうがいい。旅行が好きだということはたしかに善きつくり手になるための重要なファクターだが、他にも必要な資質はたくさんある。そこまで考えた上で、職業選択をしたほうが怪我は少ない。

 

昔、サザエさんでカツオくんが将来なりたい職業を決めるというエピソードを見たことがあるのだけど、そこで彼は「漫画を読むのが好きだ」→「僕は漫画家になる!」という意思決定をしていて、「おいおい」と思わずにはいられなかった。その後カツオくんは実際の漫画家の仕事場を目にして、この決定を撤回するに至るのだけど、就職活動だと、そこまで仕事内容に実感が沸かないまま就職まで行ってしまったりすることもあるので、この点は気をつけて考える必要があると思う。


もちろん、サービスを「つくる側」には「つかう側」にない楽しい面もあるのは事実だ。僕も昔ウェブサービスをつくったりソーシャルゲームをつくったりしていたことがあるのだけど(詳しくは拙著『脱社畜の働き方』をどうぞ)、あれは「つかう」場合には味わえないような楽しい経験をさせてもらった(つらいことも、もちろんたくさんあったが)。サービスを「つかう」のが好きだという人は、ぜひ「つくる」ことにも思いを馳せてみてほしいとは思う。

 

脱社畜の働き方~会社に人生を支配されない34の思考法

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