脱社畜ブログ

仕事観・就職活動・起業についての内容を中心に、他にも色々と日々考えていることを書き連ねていきます。

医学以外の分野で一流になれる才能をもつ人が、なんとなく医学部に入ってしまうという風潮

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こんな記事を読んだ。

 

京大が飛び入学制 16年春から、医学部に高2生 :日本経済新聞

 

日本の教育は横並びであり、そのせいで才能がある人の成長機会を奪っているという批判はよく見かける。そういう観点で考えると、飛び級や飛び入学の導入自体は好ましいことのように思える。僕自身も、飛び級や飛び入学には基本的に賛成だ。才能がある人をずっと低い環境にとどめおくことは、言ってみれば社会的損失だ。学力水準に問題がなければ、別に15歳で大学に通い始めても全然おかしいこととは思わない。

 

もっとも、冒頭で挙げた京都大学の記事には引っかかる部分もある。飛び入学の対象が、「医学部」に限定されているところだ。しかも、選考の対象は「国際科学オリンピックの出場経験者(数学、物理、化学、生物)」とある。例えば数学オリンピックの出場経験がある高校生はこの資格を満たすことになると思われるが、その人が飛び入学するのにふさわしいのは果たして医学部医学科なのだろうか。素朴に考えると、理学部数学科のような気がしてならない。別に数学に強い医者がいけないと言っているわけではないが、優れた数学の才能を持った高校生が理学部数学科には飛び入学できないのに、医学部医学科には飛び入学できるというのはなんともヘンな感じがする。

 

飛び入学の話に限らず、日本の受験生の間には「勉強のできるやつはとりあえず医学部を目指す」というよくわからない風潮が一部にある。医者になりたいという強い動機はなくても、「最難関だから」という理由で医学部を目指す人は結構多い。本人の選択なので僕はそれを個別に強く批難するつもりはないが、それでも少し「もったいない」と思ってしまうことはある。

 

例えば、僕の知り合いの男は東大理三に合格したものの、医学自体にはあまり興味がなかった。本人が「暗記ばかりで面白そうにない」とこぼしているのも聞いたことがある。彼が本当に感心があったのは数学で、成績を見るに感心だけでなく実力も相当のようだった。「あいつは数学科に行くべきなのでは」と僕らは度々ウワサをしていたが、結局彼は普通に医学部医学科に進学していった*1

 

大学入学後にまだ進学先を変更する余地がある東大ですらこうなのだから、普通に1年生で医学部への所属が決まるような大学では、数えきれないほどのミスマッチが生じているような気がする。医学部は「最難関」であるがゆえに、多才で能力が高い人たちが集まる。医学以外の分野に進んでも、普通に一流になれるような才能を持った人たちだって多数いるだろう。それでも本人が医学を強く志してきて進学してきたというのであれば納得できるが、「本当は◯◯に興味があるけど親の意向があるので」とか「本当に勉強をしたいのは✕✕だけど、医学部に入れるだけの成績があるのに✕✕学部に入るなんてもったいない」という話を聞いたりすると、「なんだかなぁ」という気持ちになってしまう。

 

別に、医者という職業や医学という学問を貶めようとしているわけではない。医者も医学も本当に立派だと心から思う。ただ、普通にその職業に就きたいとかその分野を勉強したいという動機以外の部分が強く介在して激しい競争が生まれるような構造は、あまり健全なものには思えない。

 

今回の京大の飛び入学制度にしても、「本当に勉強したいのは数学」と思っている高校生が、親の意向に沿って医学部に入るために使われる、なんてことにだけはならないことを祈りたい。

 

 

*1:東大には「進学振り分け」という制度があり、最終的な進学先は入学後に成績に応じて決めることができる。成績次第では、理三以外から医学部にも行く道もあるし、その逆も可。