2008年、当時26歳だったワタミ正社員の女性が、1日15時間という想像を絶する重労働の末に、自殺に追い込まれたという心が痛む事件が発生した。今年2月に労災認定がなされた際には、渡邉美樹会長がtwitterで「彼女の精神的、肉体的負担を仲間皆で減らそうとしていました」「労務管理できていなかったとの認識は、ありません」など反省ゼロの発言をし、大炎上となったので、記憶に残っている人も多いと思う。
その過労自殺社員の遺族が、本日(9/20)、東京都大田区のワタミ本社を訪れ、渡辺美樹会長らに事実説明を求める申し入れ書の提出を行った(毎日新聞社)。
そして、驚いたことに、現地に取材に行っていたルポライターの古川琢也氏のtwitter(@furukawatakuya)によると、遺族の対応に出てきたのはリスク管理グループのグループ長だったそうである。
僕は、このことを知った時、驚きと怒りで一瞬思考ができなくなってしまった。
なるほど、確かに完全に企業の立場で、従業員を純粋に利益を上げるための歯車のようなものと考えれば、その従業員が過労自殺をして、世間に企業の悪評を広げようとしているという状態はリスク以外の何物でもないだろう。
しかし、実際には社員は立派な人間であり、企業の利益を上げるための歯車なんかではない。社員1人1人には当然自分の人生があり、会社の利益追求に対してそこまで献身的に尽くす理由も、必要性もないはずだ。適切に対応できる部門が会社になかったのかもしれないが、自殺した遺族の気持ちを考えれば、リスク管理部門の人間が対応することがどれほど非礼極まりないことであるか普通はわかるはずである。
それだけでなく、対応の態度もかなり酷いもので、遺族は応接室にも通されることなく、玄関の外で申し入れを読み上げたそうである。「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループ」がすることとは到底思えない。
そもそも、社員を常軌を逸した重労働で自殺に追い込んでおきながら、未だにのうのうと営業ができているという事実に僕は驚きを隠せない。やったことは完全に殺人である。殺人企業を野放しにしておいてよいという道理はない。いくら労災認定がなされても、亡くなった人は帰ってこない。この事実をワタミはしっかり受け入れるべきである。
そして、ワタミに限らないが、もし今も、長時間労働や会社のプレッシャーによって精神的に追い詰められている人がいたら、すべてを投げ捨ててもいいのでとにかく全力で逃げて欲しい。迷惑とか責任とか、そういうことは考えなくていいからとにかく逃げよう。仕事なんて、人生のほんの一部でしかない。
人の命を奪っておきながら、成長とか責任とか、そういうことを平気で口にする企業を野放しにしてはいけない。このような会社が野放しにされるような社会は、一刻も早く変えなければならないだろう。

- 作者: NPO法人 POSSE,今野晴貴,川村遼平
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