昨日10月1日は、内定式が全国の大小様々な企業で行われたことと思う。このブログを読んでいる人の中にも、もしかしたら内定式に参加したという人もいるかもしれない。
ところで、多くの大学の場合、10月1日は講義の開始日でもある。内定式と講義がバッティングして、自分の取っている講義を休まなければならなかったという人も、おそらくたくさんいたと思う。
僕が疑問なのは、この事実を企業側が全く問題にしていないことである。大学の先生が、10月1日に内定式があることに対して愚痴を言っているのはたまに見かけるが、学生も、特に企業に対してこの点で抗議をしたりはしていないらしい。むしろ、ゼミを堂々と休めてラッキーくらいに思っている節すらある。悲しいことに、学生の認識は「企業>>大学」となっているようだ。入社前から、社畜精神が垣間見えて悲しくなる。
そもそも、内定式は何のための行事なんだろうか。内定の正式交付というのは1つの区切りには違いないが、別にその次の日から会社で働くわけではないのだから、講義を欠席させてまで学生を集めて社長の訓話を聞かせる必要はないはずである。どうせ4月1日には入社式をやり、そこでまた社長の話があるのだから、一回にまとめてしまったほうが学生も会社も楽なはずなのだが、どうもそういうふうに思っている会社はあまりないようだ。
学生の目線を離れて、企業の側から内定式について考えると、これの目的は明確で、「学生の囲い込み」である。
たまに知らない学生もいるので書いておくが、学生は基本的には内々定であろうと正式な内定であろうと関係なく、入社の1日前までは内定を辞退することができる。これを会社から見ると、入社日が来るまでは常に内定者に内定を蹴られてしまう可能性があるということになる。そのため、人事は内定を出した学生には、定期的にフォローを行うことになる。新卒採用担当人事の用語では、これを「内定者フォロー」というらしい。10月1日に行う内定式は、この「内定者フォロー」のための最も大きなイベントということになる。ここで内定辞退の意思を低く保ち、入社意欲をさらに高めてもらおう、というのが企業が内定式を行う狙いである。
前にも書いたように、大学は就職予備校ではなく、学問をするところである。企業の、極めて勝手な都合で実施される学生囲い込みイベントに、大学がわざわざ付き合ってやる必要があるとは到底思えない。日程を少しずらすなどして、せめて平日の講義にかぶらないようにする配慮が会社側には求められると思うのだが、そういう配慮を見せようとする企業はほとんどないのが実情だ。極めて無神経だと言わざるをえない。
もし、あなたが大学の講義を休んで内定式に参加したとしたら、その内定式に果たして大学の講義を休んでいくほどの価値があったのか、よく考えてみるとよいだろう。
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