数日前、「会社は、社員に休暇の理由なんて尋ねるな」という有給休暇についての記事を書いたが、有給については、もうひとつおかしいと思っていることがある。
有給休暇を取得する際に、上司や同僚に向けてメールで連絡をするという職場も多いと思う。その際に、メールの末尾に以下のような一文をつけている人も多いのではないだろうか。
この度は、お忙しい中ご迷惑おかけして大変申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。
ほとんど機械的にこの一文をつけているという人が大半だとは思うが、よく考えてみるとこれは変な感じがする。果たして、有給を取ることは、「申し訳ない」ことなんだろうか。
これについて、日立ソリューションズのビジネスコラムにはこんなことが書いてあった。以下は、有給をもらいたいと上司にお願いする場合にどのような表現をすべきかについて書かれたものだ。
◯「大変申し訳ないのですが、来週の金曜日に有給をいただきたいのですがよろしいでしょうか」
✕「来週の金曜日に有給をとります」
有給休暇は労働者の権利であり、会社は与える義務があります。とはいえ、業務に支障をきたさないようなタイミングでとったとしても、周りの人に休暇中に何らかの負担をかけてしまう可能性があります。また、有給休暇を取るということは、休んでいながら給料を受け取るということです。
そうしたことを考えると、「申し訳ない」という気持ちを表すべきですし、お伺いを立てるようなお願いの仕方をするべきでしょう。休んで当然だという態度は控えたいものです。
これを書いた人によると、有給を取得する際に「大変申し訳ない」という気持ちを表すべきである理由は、
- 有給を取ることで、たとえ業務調整をしていたとしても、同僚に負担をかける可能性がある
- 有給は働いていないのに給料をもらうことである
の2点ということになる。
1についてだが、確かに、突然翌日休むなどの理由で、自分の仕事の巻取りなどを同僚に頼まなければならないとするのであれば、一言謝っておいたほうがいいというのは十分理解できる。しかし、事前連絡をした上で、業務調整まで行なっているのに、「同僚に負担をかけるかもしれない」という不確実性が強いことに対して、「大変申し訳ありません」と事前に謝るのはさすがに下手に出過ぎではないか。謝るのは、実際に負担をかけてしまってからでも遅くない。
2については、ブラック経営者がよく用いるトリックだ。「有給は、働いていないのにお給料をもらうことだ」というのは、実際には嘘である。給料の額は、有給休暇も加味した上で決定されているということを忘れてはならない。有給休暇でもらえる給料は、結局のところあなたが他の日に働いた分から出ているのである。これについては、以前ビック・ママという会社の社長が「異議あり!有給休暇」という真っ黒なコラムを書いて大炎上になったことがあり、覚えているという人もいるのではないか。この論理を使う経営者を、基本的には信用してはならない。
結局のところ、急な休暇取得で実害が発生するような場合でなければ、有給を取ることは「申し訳ない」ことでも何でもない。特に謝る必要もないのに、ペコペコと頭を下げるのは日本人のよくないところだと思う。こんなふうに、有給取得にもビジネスマナーがいる、などと言い出すと、有給取得のハードルが無駄に上がってしまう。有給取得のハードルは下げていったほうが、自分が有給を取りたい時にも取りやすくなるので、絶対にそのほうがいいと思うのだけど、どうもそこまで考える人ばかりではないらしい。「自分が働いているのに、あの人は休んでいる、許せない」という発想は根暗すぎはしないだろうか。
「申し訳ない」なんて思わずに、堂々と有給休暇を取得しよう。何も後ろめたさを感じる必要はない。

- 作者: 糸井重里,ほぼ日刊イトイ新聞
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