連日、サビ残の話で申し訳ないのだが、以下の記事を見ていたら書かずにはいられなかったので許してもらいたい。
「税金泥棒」「常識では考えられない」…埼玉県職員「残業2千時間」に苦情25件
昨年度、一部の埼玉県職員の残業時間が2千時間を超えていた問題で、上田清司知事は6日の定例記者会見で県民からの苦情の手紙などがこの日までに25件届いたことを明らかにした。「民間の常識では考えられない」「税金泥棒」など、辛辣な批判が多かったという。
このほか県民からは、「長時間の労働が何日も続いたら効率がいいわけがない」などの指摘もあり、上田知事も「正鵠を得ている」。一方、「民間ではサービス残業でやるものだ」という意見については「厳密に言えばサービス残業は労働基準法違反になる」と反論した。
今後、職員数を増やすかと問われた知事は「コンピューターやシステム開発で労働時間は短縮されている。同じ仕事でも人によって時間は変わる」などと否定した。
(強調は日野瑛太郎)
まず酷いのは、「民間ではサービス残業でやるものだ」という市民の意見である。これに対して、知事は一応反論をしているが、「厳密に言えば」なんて言ってしまっている。厳密に言わなくても、サービス残業は他人の労働時間をタダで盗む行為であり、窃盗と同様に明確な犯罪行為である。
「厳密に言えば」なんて言葉がすぐに出てきてしまうのは、サービス残業という犯罪行為が、自動車のスピード違反ぐらいの犯罪だとしか思われていないことの現れではないかと僕は思う。「そりゃ、道路交通法ではそうなってますけどね、でも実際の道路を見てくださいよ。誰も厳密に法定速度を守って走ったりはしてないでしょう」という意見と、全く同じ物を感じる。実際、中小企業の社長なんかは「労働基準法なんて厳密に守ったら会社が潰れてしまう」と、まるで自分が被害者であるかのような言い方を平気でしたりする。
「民間ならサービス残業でやるものだ」というのも酷い意見だ。自分が民間企業で残業代が出ていないという怒りを、法律どおり残業代が払われた人にぶつけるというのは、「俺だけが不幸なのは許せない。お前も道連れにしてやる」という精神が垣間見えて非常に醜い。この場合、怒りをぶつけるべき相手はサビ残を強要してくる民間企業であって、きちんと残業代が払われた公務員ではない。自分の税金の使われ方にはこんなに厳しいのに、残業代が払われないことを当然のように受け入れているのは一体何なのだろうか。社畜の鑑みたいな話である。
震災対応のために2000時間の残業をしたという話を聞いて、過酷な労働に従事した人に対するねぎらいの言葉ではなく、残業代が払われたことに対する罵倒が出てしまうという今の日本の労働観は、もう狂っているとしか言いようがない。働いた分のお金をもらったことで、なぜここまでバッシングをうけなければならないのか。理解に苦しむ。
ついでに書いておくと、日本の公務員バッシングは、正しい批判がなされている場合もあるけれど、根拠のない言いがかりも相当多い。「公務員」という言葉を聞いただけで、「俺達の税金で楽な仕事しやがって!」と反射的に考えてしまうのはあまりに短絡的だ。例えば、僕の知り合いには官僚になった人も多いのだけど、彼らが民間企業では考えられないような激務に毎日従事しているということは、もっとよく知られてもいいことだと思う。官僚組織を無条件で礼賛するようなことはもちろんしないが、公務員が全く苦労をしていないと考えるのは間違いである。
他人が自分より不幸じゃないからと言って、他人の足を引っ張るようなことはすべきではない。自分が他人より不幸だと思った時は、自分が相手並みに幸福になれるよう努力をしたほうが絶対にいい。

- 作者: 城山三郎
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