脱社畜ブログ

仕事観・就職活動・起業についての内容を中心に、他にも色々と日々考えていることを書き連ねていきます。

正社員・非正社員というおぞましき身分制度と最低賃金の撤廃について

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悲しいことに、日本には「正社員と非正社員」というおぞましき身分制度が存在している。江戸時代の「士農工商」のような生まれながらにして決まる身分制度と違って、正社員と非正社員という立場が決定されるのは就職時で、建前上は相互の移動は可能ということになっている。しかし、現実には非正社員から正社員への移動は簡単にはできないし、また、大学卒業時に正社員という身分を手に入れられなかった人が、正社員という身分を手にするのも簡単ではない。もちろん、やり方次第ではどうにかなる人もいるとは思うが、大多数の人たちには難しいというのが現状だ。

 

正社員と非正社員という立場を比較した場合、まず目立つのが非正社員の待遇の低さである。非正社員社会保険の適用に制限があり、賃金も安い。また、いつ解雇されるかもわからない。そのせいで、生活に困難が出ている人さえいる。未来も不透明だ。現在、非正規労働者の割合は労働者全体の35%であると言われており、これだけボリュームがあるにもかかわらず、このような不安定な地位に置かれているのは国民の大半を軽視する行為に僕には思える。

 

非正社員の待遇の低さはこのようによく指摘されるが、では正社員は恵まれていて安泰かと言われると、実際にはそうとも言えない。経営者は、正社員の「正社員という立場を失いたくない」という弱みにつけ込み、サビ残の強制や、過労死するまで働かせるといった労働犯罪を平気で犯す。酷い場合には「やりがい」という金銭的報酬以外の対価に金銭的報酬並の価値を感じるよう「洗脳」を行い、社畜として徹底的に利用しようとする。正社員の未来も、決して明るいとは言えない。

 

このように、日本には正社員・非正社員という呪われた身分が存在し、どちらの未来も決して明るいものとは言えない。今やらなければならないことは、両者の垣根を壊して、お互いのデメリットを打ち消すことだ。その第一歩として、非正社員の待遇の格上げは避けては通れない。非正社員も正社員同等の社会保険に加入できるようにし、非正社員であっても不安のない生活を送れるような賃金がもらえるような制度設計が必要だ。これができれば、非正社員である人が生活困難や未来の不安に怯えることもなくなるし、現在正社員の立場にある人も、経営者の不当な搾取に耐えながら、その地位にしがみつかなければならない理由がなくなる。

 

なんで今日、わざわざ正社員・非正社員の待遇格差の問題を取り上げたのかと言うと、今世間を賑わしている「維新の会」が掲げる最低賃金の撤廃・解雇規制の緩和という政策は、この部分の議論が甘いと感じられるからである。最低賃金の撤廃や、解雇規制の緩和の狙いは、雇用の流動性を確保することにあるらしいが、現在の正社員・非正社員といったおぞましき身分制度が存在している状況でこの政策だけを実施しても、非正社員に対する不当な買い叩きが発生するだけで、何ら状況が改善することはないと僕は思う。

 

解雇規制の緩和を行うことで、正社員の地位を今よりも下げて非正社員に近づけようとする狙いが見えるが、このアプローチはよくないと僕は感じている。解雇規制が緩和されても、正社員・非正社員という立場が今とほぼ同等の条件で存続する以上、正社員はやはり「正社員」にしがみつくために足元を見られ不当な搾取に耐えなければならないし、また、非正社員も未来が不安であることに変わりはないと思えるからだ(維新の会が言う「負の所得税」による社会保障がこの点を補いうるものであれば話は別だが、現時点ではフワッとし過ぎていて正直判断しかねる)。解雇規制を緩和したぐらいでは、正社員・非正社員という日本の呪われた身分制度は改善されないだろう。

 

維新の会」の主張はなかなかセンセーショナルだが、日本には他にも労働問題が山積みである。今回のように日本の労働システムについて議論が活発になるのはいいことだが、徹頭徹尾経営者・市場経済目線からしか議論がされないのはいかがなものかと僕は思う。もっと色んな立場の人が、議論に参加するとよいのではないかと思ったりしている。

 

政治のことよくわからないまま社会人になってしまった人へ (増補改訂版)

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