日本社会にはブラック企業が跋扈しているが、こういった会社に入れ知恵をすることで、お金を儲けている人たちがいる。今日は、そんな人たちについて少し書きたい。
社会保険労務士という職業がある。労働関連法令や社会保障法令に基づいて各種書類を作成したり、労務や社会保険に関する相談や指導を、企業経営者に対して行なったりするのが主な仕事だ。一言で言うと、「人事・労務」の専門家ということになる。
以前このブログで批判した『シュガー社員が会社を溶かす』の著者である田北百樹子氏も、社会保険労務士である。田北氏の例を見ればわかるように、社労士は会社側をとにかく擁護する立場を取る人が多い。残業代をなるべく払わなくても済む方法や、本来なら会社都合退職になるところをうまく自己都合退職にさせる方法など、ブラック企業が喜ぶようなノウハウを次々と入れ知恵する。例えば、Amazonを探せば以下のような、社労士の人たちが書いた企業経営者向けの本が山ほど出てくる。労働者側が読んだら、怒りで卒倒するようなタイトルの本ばかりである。

ちょっと待った!! 社長!その残業代払う必要はありません!!
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誤解のないように書いておくと、労働者側の立場を尊重した上で仕事をしている社労士の方々も、もちろんいる。「社労士はブラック企業の手先だ」と十把一絡げに批判するつもりは全くないので、そこは勘違いされないようにしていただきたい。
社労士だけでなく、弁護士の中にも、ブラック企業に入れ知恵をして儲けている人がいるという。法科大学院設置後の弁護士増による過当競争で、色々と食うために大変なのは理解できるが、弁護士の理念に逆行するようなことをやっていては、胸のバッジが泣くだろう。
社労士にせよ弁護士にせよ、なぜ労働者側ではなく、企業側の立場に立とうとするのだろうか。理由はいたって簡単である。そのほうが儲かるからだ。労働問題に巻き込まれてしまった個人よりも、会社のほうがお金を持っているのが普通である。市場が大きい方に行く、というのはビジネスの基本だ。B2CのビジネスよりもB2Bのビジネスのほうがマネタイズが容易なのと、理由が似ている。
構造的には間違いなくそうであるにせよ、僕はこの手の士業の人たちにはなんとか一線を超える前に踏み止まってもらいたい、と思っている。自分が食べるために、他の人を食い物にしていいという道理はない。良心だけは、最後まで捨てずにいてもらいたいものである。

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