脱社畜ブログ

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自民党の「勝ちすぎ」が民主主義を脅かす

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今日は、衆議院議員選挙である。選挙特番を見た感じでは、ある程度予想がついていたことではあるが、今回は自民党の圧勝に終わりそうだ。テレビ朝日の言葉を借りれば、今回自民党は「300議席近く」獲得する勢いだそうである。

 

僕は別に自民党の支持者でも、民主党の支持者でもないのだけど、今回のように特定の政党が「勝ちすぎてしまう」という状態は、民主主義そのものを脅かす危険があり、あまり歓迎できることではないと思っている。戦前の大政翼賛会を挙げるまでもなく、違う考えの人たちがいるからはじめて議論が起こるわけで、ある政党の力が極端に強すぎるという状態は、あまり民主主義的にはよろしくない。

 

野党に力があると、国会で審議がひたすら長引いて法案が通るのに時間がかかりすぎるので問題だ、ということを言う人がいるかもしれない。これはそのとおりで、民主主義という制度に内在している限界でもある。民主主義も、別に完全無欠な最高の制度というわけではない。民主主義の持っている最大の弱点は、その効率の悪さだ。極論を言えば、本当に国民のためを思って素晴らしい政策を実行してくれる独裁者にすべて決めてもらったほうが、政策の実行効率は最大限高まるだろう。例えば、企業経営の分野などではワンマン経営者がすべて決定をすることで、効率的な経営を実現している企業もある(楽天ユニクロソフトバンクなど)。しかし、政治の分野ではその方法ではろくな結果にならない、ということは歴史が教えてくれている。

 

今回の選挙が特殊だと思うのは、自民党に入った票は、必ずしも自民党を「支持した」票だとは言いづらいということである。実際には「民主党がイヤだ」という意思表明が大半で、自民党を積極的に支持する、という意味で投票をした人ばかりではなかったのではないだろうか。このように、「積極的支持」でなくても、結果的には支持と擬制されてしまうのは結構おそろしいことだと思う。

 

「支持」ではない、「民主党が嫌だ」という気持ちが自民党を勝たせすぎてしまったのだとすれば、国民に積極的に支持されたわけではない政党が強大な権力を握ったということになる。国民の後ろ盾があれば一党独裁をしていいと主張するつもりは全然ないが、後ろ盾さえ疑問が残る政党が大きく議席を占めることになるというのは、やはり大丈夫なのか、と思わずにはいられない。今回の選挙が「民意を反映した結果」と言い切ってしまうことは、こういった理由でできないと思う。

 

もちろん、自民党も決して一枚岩というわけにはいかない政党なので、これで直ちに戦前の大政翼賛会に逆戻り、というのはさすがに言い過ぎかなとは思っている。しかし、それに近い危機感は間違いなく存在する。自民党憲法草案には、対国家規範であるべく憲法に「権利には責任及び義務が伴う」なんて信じられない文句が入っているのだ(『片山さつき(と自民党)は日本全体をブラック企業に変えるつもりなのか』『「権利行使には義務が伴う」というフレーズに対するよくある誤解』参照)。

 

自民党に僕がお願いしたいのは、今回の選挙の結果を受けて「俺達の政策や憲法草案は大多数の国民から支持されている」という勘違いをして、国民の望まない政策や法案を議席にまかせて推し進めるようなことはしないでいただきたい、ということである。なんだか野党をしている間にヘンテコな政党になってしまった感があるが、大半の国民は民主党がやった効果のないバラマキその他の政策に失望したというだけであり、自民党の草案にあるように憲法を改正して欲しいなどとはおそらく思っていない、ということはわかってほしいと思う。

 

次の選挙では、今度は民主党が今よりヘンテコな政党になって、残念な結果に終わった自民党から政権を奪い返すことになる、といったような冗談みたいなことが起こるのではないか、と今からちょっと不安になっている。自民党民主党も、あるいは他の政党も、どうか「民意」としっかり向きあうという基本的なところは忘れないでほしいところである。

 

政治のことよくわからないまま社会人になってしまった人へ (増補改訂版)

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