何かと話題になっていたマクドナルドのENJOY!60秒サービスだが、やはり無理があったのではないか、という声がネットの各所で上がっているようである。
【やはり無理があった】マクドナルドの「ENJOY!60秒サービス」が酷い
http://togetter.com/li/433935
ENJOY!60秒サービス | キャンペーン | McDonald's
http://www.mcdonalds.co.jp/campaign/60seconds/index.html
ご存知の方も多いと思うが一応キャンペーンの内容を説明しておくと、この「ENJOY!60秒サービス」は、注文を受けてから商品の提供を完了するまでの時間が60秒を超えた場合に、ハンバーガーの無料券を進呈するというものだ(時間内に提供できた場合はコーヒー(S)の無料券がもらえる)。
日本では顧客の要求が過剰なため、サービス業従事者の負担があまりに大きすぎるという話はこのブログでは度々書いているが、今回のマクドナルドの60秒サービスは、その顧客の要求を曲解して、過剰なサービスを提供しようとしたために起こってしまった悲劇だと僕は思っている。今回のキャンペーンで特徴的なのは、ステークホルダー全員が損をしてしまったことだと思う。
まずは、現場でサービスを提供することになる従業員。はじめからサービス券を提供することを前提に、特にオペレーションを変えていない店舗もあるようだが、60秒以内に商品を提供するという目標達成のためにいつも以上に大きな負担をかけられることになった店舗も多いことと思う。キャンペーン中は時給が上がるという話があるわけでもないので、単に負担だけが上がり、彼らは大いに損をしている。
一方で、顧客は得をしているかというと、そうでもないということは冒頭に挙げたtoggeterのまとめを見てもらえばわかる。サービスの付随部分の質向上のために、サービスの本体部分の質が低下してしまうのは、本末転倒としか言いようがない。無料券などいらないから、普通の水準のサービス提供を受けたいという人のほうがはるかに多いのではないだろうか。
そして、今回のキャンペーンはマクドナルドというブランド自体にとっても、おそらくマイナスになったと考えられる。ネット上はネガティブな言説で溢れているし、顧客の評判も決して良いものではない。キャンペーン発案者はこのような結果になりうるリスクがあることを、きちんと把握していたのだろうか。
このように、「ENJOY!60秒サービス」は、店舗従業員・顧客・マクドナルドブランドのすべてが損をした、まさに「誰得」なキャンペーンであったと言えるだろう。そもそも、飲食業は食品を提供するのが本質なのであって、曲芸をするのは仕事には含まれない。「ENJOY!60秒サービス」なんて名前をつけてしまったところから考えるに、発案者にはこの点の認識についての根本的な勘違いがあったような気がしてならない。
僕が最も悲惨だと思うのは、このキャンペーンはマクドナルド上層の浅薄な発案から始まっているにもかかわらず、正面でクレームを受けるのはあくまで店舗のスタッフだということである。上からはやりたくないことをやれと言われ、無理をしてやれば今度は顧客からもクレームを入れられ、まさに踏んだり蹴ったりだろう。この件で、店舗スタッフを責めることだけはしてはならない。
この、誰も得をしないキャンペーンが、早く終了することを願っている。
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