日本の会社では、業務とは無関係な研修が行われることがある。例えば、以下に挙げたものは、今までネット界隈を賑わせた「業務に直接役に立ちそうには到底思えない」研修の数々である。こういった研修は、会社がやるものというよりは軍隊がやるものといった感じが強くするもので、激しいブラック感を感じずにはいられない。
イー・クラシス(土嚢マラソン、穴掘り)
http://www.e-classis.co.jp/recruit_08camp.html
伊藤忠商事(タフネス研修:登山・テント生活・3時起床)
http://www.asahi.com/national/update/0420/TKY201204200513.html
日清食品ホールディングス(無人島でサバイバル研修)
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1293662.html
ダイセル(自衛隊体験入隊)
http://www.daicel.com/recruit/education/education.html
そこで今日は、なぜこのような業務に直結しない、ブラックな研修が行われるのかについて、5つの仮説を立ててみたので、これらを列挙してみたいと思う。
仮説1:現場とのコミュニケーション不足
そもそも研修とは、実際に業務を行うにあたって必要な考え方や技能を身につけるために行われるものである。そういう意味で、研修の企画者は実際に業務を行なっている現場と密なコミュニケーションを取り、実用度の高いプログラムを作っていく必要がある。このようなプロセスが踏まれなかったために、精神論のみを根源としたよくわからない研修が生まれた可能性がある。
仮説2:世代間闘争の発現
「最近の『ゆとり世代』の若者は、苦労を知らない。社会に出たら辛いことが多いということを、叩きこんでやらなければいけない」という、いわゆる「若者叩き」がそのまま研修の形になって現れたという仮説。伊藤忠のタフネス研修では明確にこのストーリーを謳っており、このパターンである可能性が高い。
仮説3:自分たちも昔やったから。つまり、負の連鎖。
理不尽なことを先輩からされたら、後輩に理不尽なことをして返す、という負の連鎖が、研修という形で現れたという仮説。先輩が、「俺達も新人の頃は」みたいなことを言い出したとしたら、きっとこれである。どこかで打ち切るか、組織が崩壊しない限り、延々と負の連鎖は続いていく。
仮説4:洗脳目的
理不尽であろうと、業務と関係が無いことであろうと、とにかく「命令に従わせる」ということを叩き込むために、軍隊のような研修を行なっているという仮説。イー・クラシスの土嚢マラソンや穴掘りは、これに該当する可能性が高い。
仮説5:研修で何をすれば効果的なのかわかっていない
研修の達成目標が抽象的で、実際に何をやったらよいのか分からず、不思議な研修メニューになってしまったという仮説。日清食品の、中間管理職向けの「無人島サバイバル研修」はこれにあたる可能性がある。
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こういったブラック研修は、その研修の参加者にとって何ら利益がないことはもちろん、企業イメージも損なう可能性があり、はっきり言って無駄であり、有害ですらある。このような研修を嬉々として社員に課している会社は、無駄で有害なことに金と時間を使っていることに、気が付かなければならない。

- 作者: ルイス・サッカー,幸田敦子
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