「世の中の常識にとらわれない」って言う奴バカ。
http://masayuiiyu.hateblo.jp/entry/2013/01/23/173627
なんだか言葉遊び感が拭えないのだけど、これをきっかけに「常識」という言葉の意味について色々と考えてみると結構面白い。もっとも、今回のエントリは「常識」の意味について考えるものではない。以下の一文について考察してみたいと思っている。
ビジネスの基本は「人と違う事をする」事だ。
この、「ビジネスの基本は人と違うことをすること」という話は色んなところで聞いたことがあるような気もする言葉だが、果たしてこれは本当なのだろうか(これが「常識」でいいのだろうか?)。僕にはどうしてもそうは思えないのだ。
仮に、GoogleとかFacebookのような、世界トップレベルのイノベーション企業を目指すというのであれば、斬新な常識に囚われない発想は必要不可欠なのかもしれない。もっとも、世の中に企業は山ほどあるわけで、何もGoogleやFacebookだけがビジネスをしているわけではない。例えば、受託でホームページを作っている会社は星の数ほど存在するが、これらの会社それぞれがオリジナリティ溢れるビジネスを行なっているということは全然なく、基本的にはどれも同じような業態で、大差ないことをやっている。それでも会社を潰さず経営が成り立っているということは、これは十分立派な「ビジネス」である。世の中に存在する会社の大多数、特に中小企業の事業に「独創性」はない。むしろ「人と違うこと」をして利益を上げている会社のほうが、実際には少数だったりする。
僕も経営者の端くれだったので言わせてもらうと、ビジネスにはそれほど独創性は必要ない。独創性はあったらすばらしいのかもしれないが、それより大事なのは自分が商売をしようとしている場所に「市場」がちゃんと存在していることだ。どんなに面白いビジネスアイディアを出したとしても、お金を払ってくれる人がいなければビジネスにはなりえない。「人と違うこと」をしようと躍起になったばっかりに、客がいないところで店を広げてもお金は儲けられない。
そういう意味で、儲かっている会社の「模倣」をするというのは、経営の方法としてはかなり有効だと僕は思っている。儲かっている会社があるということは、市場の存在は確定している。あとは、どれだけ既存のプレイヤーから奪うことができるかだけが問題だ。基本的なところは模倣して、ちょっとだけ捻りを入れる。例えば、競合サービスよりも専門に特化して、専門領域において顧客を奪う(こういう企業のことを、バリュースライサーという)。こういったやり方はもう決まりきったパターンなので、別に独創性は必要ない。他にも、海外で流行っているサービスを、そのまま日本でローカライズして出すという方法もある(この場合は、海外に市場があることから、日本にも同じ市場があるという仮説が出発点になっている)。初期のGREEやmixiが取ったのがこの方法だ。このように、「模倣」はビジネスの基本なのである。
独創的な発想を元に、最初に市場を切り開く存在になるのは、確かにかっこいい。しかし、そうやって実際に市場を切り開けるのは、ほんの一握りに過ぎない。そういった小さな可能性に賭けることだけが、ビジネスではないのである。
ビジネスをしたいという方は、とりあえず模倣からはじめてみるのも一考だと僕は思う。

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