ゆとり世代向き?新入社員研修に自衛隊体験入隊
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130411-OYT1T00055.htm
度々「社会人の常識」という言葉を使う人がいるが、はっきり言ってこれが何を指しているのか僕にはさっぱりわからない。どうやらこの記事を読む限りでは、「社会人の常識」とやらは自衛隊に体験入隊すると身に付けることができるらしい。
100歩譲って「社会人の常識」なるものが存在していたとして、例えばそれを会社内部で行う研修で身に付けることはできないのだろうか。なぜ業務と全く関係がない、自衛隊の体験入隊でそれを身につけることになっているのか、こういう研修をさも当然のように企画している人に、詳しく説明してもらいたい気分である。軍隊であれば上官の命令には絶対に従わなければならないが、まさかそれと同じことを新入社員にも求めているということなのだろうか。そうだとしたら、なかなかおそろしい話である。
以前、なぜ、業務と無関係なブラック研修が行われるのか:5つの仮説という記事の中で、この手の「業務と無関係な研修」についての記事を書いたが、自衛隊研修はこの仮説のうちのひとつ「世代間闘争の発現」によるものに他ならない。新入社員の能力を高めよう、という意識から来ているものでは決して無く、「最近のゆとり世代は軟弱らしいから、厳しく指導しなければならない」という思い込みだけで、研修が企画されてしまったのだろう。
そもそも、新人研修は先輩社員の鬱憤晴らしのために行われるわけではない。配属後の業務をスムーズに、滞りなく進められるように教育を行うのが目的であり、それゆえ研修の手段選定や効果測定は一部の人間の独善的な思い込みで行うようなことは避けなければならない。本来であれば、研修をさせる側だけでなく、受ける側も十分研修の趣旨や目的について納得した上で行ったほうが効果は高いと思うのだが、この手の自衛隊研修でそのようなプロセスがきちんと経られているとは到底思えない。
自衛隊側も、「若い世代に自衛隊への親近感を持ってもらう機会にもなる」と基本的には広報活動の一貫として捉えているようだし、新入社員・自衛隊側・企業側三者の意図がそれぞれ噛み合っていないような気がして、なんともいえない歯がゆさを感じてしまうような話だ。
理不尽な研修は恐怖政治と一緒で、一時的には効果を挙げても、それがずっと続くことはない。年輩の方々は、新人を「ゆとりだ」と責める前に、自分たちの教育方法に問題があるのではないかと一度考えてみてほしいものである。
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