数日前に話題になった記事。
「まとめサイトに洗脳された大人」と「まとめサイト思想に染まる若者たち」
http://bayaread.hatenablog.com/entry/2013/07/04/004426
「マスコミの偏向報道」を声高に叫ぶ人に限って、ネットに書いてあることは何の確認もなしに受け入れていたりする。テレビや新聞の言うことを無批判に受け入れるのも、ネットに書いてあることを無批判に受け入れるのも、ある特定のメディアの内容を自分で吟味せずにそのまま取り入れてしまっているという点では何も変わらない。ネットの情報に精通しているからと言って、メディアリテラシーが高いということには当然ならない。
テレビにせよ新聞にせよネットにせよ、メディアの情報を適切に読み解く、つまり「メディアリテラシー」を身につけるためには「自分で考える」ことが必要不可欠だ。ただ、「自分で考える」といっても、漠然としている。「マスコミはウソばっかりだ、ネットに書いてあることこそ真実なんだ」と信じ込んでいる人も、自分ではよく考えていると思っているのかもしれない。
そこで、今日は僕が思うメディアリテラシーを身につけるために大切にしたい考え方について、少し書いてみることにする。これは僕が普段気をつけていることでもある。
1. 情報発信の裏にある「発信の意図」について考える
テレビも新聞も、あるいは2chのまとめサイトも、情報発信の際には発信の意図があるのが普通だ。漫然と、適当に配信記事を選定しているということは普通はない。例えば、最近、文春がやたらとワタミの渡邉美樹会長についての記事を盛んに書いているが、これはどういう意図でやっているのだろうか?ということを考えるようにする。「郁文館で反省文100枚」という記事だけ読んで、「あー、ワタミはやっぱり酷いなぁ」と感じるだけで終わりにしてはいけない。「どうして今、このタイミングで文春はこういう情報を出してきているのか」ということも合わせて考えるようにすると、記事以外からも読み取れることが増える。
2. 世の中には、白黒はっきりしないことの方が多いということを知っておく
世の中には色んな問題が山積みになっているが、ある見方が100%正しいということは基本的にはあまりない。はっきりと正解・不正解が決まるのは数学の問題ぐらいだろう。 特に政策のようなものは、どんなものであってもそれで利益を受ける人と、不利益を被る人が出てくる。「正しい」と言い切れることは、本当はあまりない。
一方で、「意見」は多くの場合「Aが正しい」「Bが正しい」といったような白黒はっきりつけた状態で発信される。そうしないと、意見の体をなさなくなるからだ。「意見」に接する時は、このことを知っておくようにすると、特定の意見に妄信的に引っ張られてしまったりすることがなくなる。
3. それで誰が得するのか、誰が損するのかを常に意識する
例えば、ある報道に接した時には、最初にそれによって得をするのは誰で、損をするのが誰なのかを、明確に意識する癖をつけるといい。自然災害のようなものを除けば、ある事象が起きた時には、必ず利益を受ける人と不利益を受ける人の両方がいる。それなのに、報道内容が片方の立場にしか言及されていなかったとしたら、どういうことなのだろうか、と考えるきっかけになる。
4. 逆の立場で考えてみる
ひとつ前のものに似ているが、常に立場を逆転して考えてみるという癖もつけるとよい。ワタミの報道に接したら、変な話だがワタミ側の立場にもたって考えてみる(勘違いの無いように言っておくが、僕はワタミを擁護しているわけではない)。接した情報のものとは視点を変えて再度考えてみることで、新しく何かが見えてくることも少なくない。
5. 論理に敏感になる
このあたりからさらに一般論。情報を判断する時に、拠り所になるのはやはり論理だ。一見、ただしそうだけど支離滅裂な文章というものは世の中に溢れている。ネットには山ほどあるし、新聞や雑誌にだってそういう文章はある。こういう論理の罠に騙されないようにするために、日頃から論理の力は鍛えておくことをおすすめしたい。ちなみに、論理力を身につけたいなら野矢先生の以下の本がおすすめだ(紹介記事)。
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6. 統計の知識を身につける
論理と同様、罠にはまりやすいのが「統計」だ。かなり乱暴なアンケート調査をして、「◯◯ということが言える」という誤った情報が発信されることは実際少なくない。別に、専門家レベルまでは必要ないので、最低限変なデータには騙されない程度に、統計の知識はつけておこう。
ちなみに、僕が統計の本で読んでよかったと思っているものは以下の3冊。ふざけてるように見えるが、本気でいい本だった。
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以上、徒然なるままに書いてみた。もちろん、違った考え方もあると思う。当然のことながら、この記事やこのブログの内容に接するときも、それを無条件で鵜呑みにしないだけのメディアリテラシーが必要なことは、言うまでもない。