中川淳一郎さんの『ウェブはバカと暇人のもの』 を今更ながら読んだ。

- 作者: 中川淳一郎
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/04/17
- メディア: 新書
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『ウェブはバカと暇人のもの』があまりにも面白かったので、同じテーマを扱った『今ウェブは退化中ですが、何か?』(講談社)、『ウェブを炎上させるイタい人たち』(宝島社)まで一気に読んでしまい、僕はすっかり中川さんの本のファンになってしまった。最新作の『ネットのバカ』はまだ読んでいないのだけど、今から読むのが楽しみだ。

今ウェブは退化中ですが、何か? クリック無間地獄に落ちた人々 (講談社BIZ)
- 作者: 中川淳一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/12/18
- メディア: 単行本
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ウェブを炎上させるイタい人たち-面妖なネット原理主義者の「いなし方」 (宝島社新書 307)
- 作者: 中川淳一郎
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2010/02/10
- メディア: 新書
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インターネットは、すばらしいテクノロジーである。ネットのおかげで発生した市場はいくつも存在するし、生活は間違いなく便利になっている。このように、ネットは「世の中を変えたテクノロジー」として、肯定的に論じられることが多い。僕自身もネットの正の側面は素直にすばらしいと思っていて、例えば以前『ネットの普及とプライベートプロジェクト』という記事ではネットの普及によって個人がプライベートプロジェクトに挑戦可能になったことについて書いたりした。
ただ、どんな物事にもメリットがあればデメリットもがあるのが普通だ。ネットにも、負の側面はある。もっとも、ネット上ではネットの負の側面について論じられることはあまりない。まあ、これはあたりまえでもある。テレビがテレビの悪口を言わないように、ネットはネットの悪口を言わない。もっぱら、ネットの負の側面を論じるのはネット以外のメディアだ。
『ウェブはバカと暇人のもの』などの中川さんの著作では、このようなインターネットの負の側面にクローズアップしたものになっているが、テレビなどで行われるいわゆる「ネットの闇」特集と違うのは、中川さん自身がネットニュースの編集者であり、言ってみれば「ネットの中の人」だということだ。それゆえ、内容は非常にリアルである。ネットで情報発信をしたり、ネット関連の仕事をしたことがある人は「そうそう、そうなんだよ」と頷きすぎてしまうことは間違いない。
ネットのいいところでもあり悪いところでもあるのは、まったくの赤の他人を結びつけることができてしまうということだ。たとえば、相手がtwitterをやっているならいきなりその人に言葉を届けることができる。これが面白い場合もあるのだけど、正直面白くない場合もある。僕も、突然見ず知らずの人からネガティブな言葉をかけられて、まるで通り魔にあったような気分にさせられたこともある。問い合わせフォームから、脅迫めいた文章を送ってくる人もいる。
もちろん、ネットがきっかけでコミュニケーションをするようになった人たちの中にはいい人もたくさんいて、そういう人たちには感謝したい気持ちになるのだけど、一方で、いきなり殴りかかってくるようなタイプの人とは正直付き合いたいとは思わない。面倒くさい人と不毛な議論をするのにエネルギーなんて使いたくない。こういった「相手を選ぶ」態度を卑怯とか逃げるのかとか言う人がいるけど、「相手を選ぶ」というのはそもそもコミュニケーションの前提でもある。
リアルなコミュニケーションでは、みんな相手を選んで付き合いをしているのが普通だ。付き合いたくもない人と付き合うことは、ストレスになる。職場のコミュニケーションがストレスフルな理由はそこにある(「誰と」働くかは仕事内容以上に重要だ)。仕事なら割り切って付き合わなければならない場合もあるかもしれないが、プライベートでは、別に嫌なヤツと対話をする必要はないだろう。リアルでも価値観が違う人とは実りのある対話なんてできないわけで、ネットだったら尚更そうである。ストレスが溜まるコミュニケーションにエネルギーを使うのはもったいない。
この本の書評をネットに上げること自体に、ちょっとした矛盾があるような気がするが、本書はネットをヘビーユーズしている人にこそよく読まれるべき本だと素直に思う。ネットはたしかに便利だが、結局使うのは人間だ。使う人間の側に問題があれば、当然厄介なことも起こりうる。