脱社畜ブログ

仕事観・就職活動・起業についての内容を中心に、他にも色々と日々考えていることを書き連ねていきます。

転職のきっかけはネガティブなものでも全く問題ない

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こちらの記事を読んだ。

 

 

まず先に態度を表明しておくが、僕はこの記事の内容には全く賛同できない。この記事のような、いわゆる「逃げの転職」を否定する人をよく見かけるが、それはあくまで印象論でしかない。この記事には「今ダメな人は、どこに行ってもダメ」というサブタイトルがつけられているが、これは嘘である。今ダメな人も、環境を変えればうまくいくことは十分ありうるし、実際にそういう転職の成功例を僕はいくつも見てきている。

 

「もっとバリバリ働きたい」といった前向きな悩みではなく、「頑張っているのに評価してもらえない」「人間関係がイヤだ」「上司が嫌いだ」などと後ろ向きな悩みを持つ場合、8割には転職すべきでないと伝えています。

 

別に転職をしたくない人にまで今すぐ転職をしろと言いたいわけではないのだが、今の環境に不満があるなら転職はいつだって有効な選択肢となりうる。「頑張っているのに評価してもらえない」という悩みは自分が納得できる評価制度を採用している会社に転職すれば解決するし、「人間関係がイヤだ」「上司が嫌いだ」といった悩みも、転職で環境がリセットされれば解決する可能性はある。もちろん、転職はあくまで「環境のリセット」なので問題が解決されることが約束されるわけではないが、だからといって後ろ向きな理由で転職すると絶対に不幸になるという主張はおかしい。

 

そもそも、「もっとバリバリ働きたい」といったよくあるポジティブな転職理由は、ほとんどの場合、採用されるためのタテマエである。面接その他の場面ではこういったポジティブなことを言っておいて、実際にはそれこそ「人間関係がイヤだ」「上司が嫌いだ」という理由で転職している人は相当数いるだろう。会社員時代に、よく中途採用の人と「どうしてうちに来たんですか」という話をしたが、前職についてのネガティブな理由から転職してきたという人は少なくなかった。では彼らが仕事ができなかったのかというと、そんなことは別にない。逆に、ポジティブな理由で転職して来た人が空回りしていて疎まれるというケースも目にしたことがある。結局のところ、転職理由のポジティブ/ネガティブと転職後の仕事のできる/できないにはそれほど関係があるようには思えない。

 

もっとも、この記事からも学べることはある。この記事を見る限り、少なくとも日本で採用に携わる人間は、ネガティブな理由を述べる候補を好まないということはわかる。だから、転職する時はきっかけがネガティブな理由によるものであっても、とりあえずポジティブな理由を述べるようにするべきだろう。何もバカ正直に本当のことを言う必要はない。大人はホンネとタテマエを使い分けるのだ。

 

タテマエと言えば、元記事には以下のようなことも書かれてあったが、これこそタテマエの極地である。

 

「給与の決まり方」の基礎を改めてお伝えしておきます。そもそも給与とは、企業側が社員の実力を評価し、それに応じた形で決められるものです。別に転職しなくても、現職の中で成果を出して昇進・異動をして、できる仕事を新しく増やせば、年収は上がるはずですよね。 

 

給与の決まり方について、タテマエとしてこのような説明がなされることが多いが、実際にはこんなふうに給与の額が決まることはほとんどない。仮に同じ仕事をしていても、A社では年収800万、B社では年収650万なんていう例はザラにある。

 

元記事では人事Xなる人物が「企業は妥当な給与を支払うことで人材流出を防ぎ、競争力を維持しようとしているから、現在の勤務先から支払われている給料こそが人材の価値を表している」という主張でこれを否定しているが、そういった健全な労働市場が機能するのはそれこそ社員がネガティブな理由で簡単に転職するような状態が前提になっているわけで、この説明は自己矛盾している。最近、日系企業を辞めてGAFAに転職するというエントリをよく目にするが、こうも簡単にGAFAに人材を奪われている日系企業が「妥当な給与を支払うことで人材流出を防ぎ、競争力を維持しようとしている」とは到底思えない。

 

実際には、一度採用されてしまうとそこからの給料は上がりにくく、一番給与交渉が機能しやすいのは転職時というのが現実である。仮に今いる企業で自分のやっている仕事に見合う給料がもらえていないと思うのであれば、本当に転職するかは別にして、とりあえず一度転職活動をしてみればよい。そこで少し強めに給与交渉をしてみよう(自分で直接交渉したくないなら、給与交渉は転職エージェント経由で行うこともできる)。あなたの認識が独善的なものでなければ、給料は上がるだろう。

 

僕自身は、もっとネガティブな理由で転職する人は増えてきてもよいと思っている。そうすれば「頑張っているのに評価してもらえない」ような会社からは人がどんどん辞めていき、いずれそういう会社は淘汰されるだろうし、「人間関係がイヤだ」「上司が嫌いだ」と思う人が多い環境の会社からも人はどんどん辞めていき、やはりそういった会社は淘汰される。つまり、ブラック企業や居心地の悪い企業の淘汰が進む。そうなれば、本当に企業は人材流出を防ぐために妥当な給料を払うようになるかもしれない。

 

転職はあくまで「勤める会社を変えること」にすぎず、そこに前向きとか後ろ向きとかいう区別を導入したところであまり益はない。結局、転職してよかったかどうかは転職先の企業が自分に合っていたかどうかの一点に左右される。「前向きな理由で転職」をしたところで転職先の企業が自分に合っていなければ転職は失敗だし、「後ろ向きな理由で転職」しても転職先が自分に合っていれば転職は成功になる。

 

だから、転職のきっかけはネガティブなものでも全く問題ない。もちろん、転職ブームに「踊らされる」ようでは困るが(そもそもこの転職ブームという言葉にはだいぶ違和感があるが)、自分の意志で「転職したい」と思ったのであれば、その理由が後ろ向きなものであったとしても、真剣に検討してみる価値はあると思う。

 

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