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脱社畜ブログ

仕事観・就職活動・起業についての内容を中心に、他にも色々と日々考えていることを書き連ねていきます。

恋愛指南書に見せかけた「人とのつきあい方」の指南書――『仕事ができて、小金もある。でも、恋愛だけは土俵にすら上がれてないんだ、私は。』

書評

サイボウズ式でご一緒させていただいている桐谷ヨウさん(旧ファーレンハイトさん。id:fahrenheitize)がいよいよ本を出版された。

 

仕事ができて、小金もある。でも、恋愛だけは土俵にすら上がれてないんだ、私は。

仕事ができて、小金もある。でも、恋愛だけは土俵にすら上がれてないんだ、私は。

 

 

「書いている」という話は去年ぐらいから聞いていたのだけど、実物を見てその厚さに驚いた。375ページと、この手の本にしては結構な分量がある(もっとも、厚さに対して価格は1300円なのでだいぶお値打ちだ)。かなりの力作である。

 

タイトルや表紙を見る限り、本書は女性向けの恋愛指南書のように見える。僕は女性ではないし、特に恋愛のことで悩んでいるということもないので想定読者からは外れるイレギュラーな読者だろうと思って読み始めたのだが、どうやらそれは誤っていたようだ。

 

本書は女性向けの恋愛指南書の体裁をとっているものの、男性が読んでも役に立つし、さらには恋愛に興味がない人が読んでも学べるものがあると思う。たとえば職場の人間関係であるとか、友達付き合いであるとか、あるいは初対面の人との接し方であるとか、およそ「人とのつきあい方」に関連があることで悩んだことがある人は、本書の中から解決のヒントを見出だせるかもしれない。

 

本書は、前半と後半で結構テイストが異なる。前半では恋愛についての結構具体的な話が多く、みんながなんとなく感覚で空気を読みながらやっている「恋愛なるもの」のルールや公理を言語化し、わかりやすい解説が加えられている。

 

恋愛に関わっていると心のモヤモヤで身動きが取れなくなって使い物にならない自分にイライラすることがあるが、そうなってしまう理由のひとつが「恋愛のルールがよくわからない」というものなのではないだろうか。本書の前半部分を読めば、心のモヤモヤが完全には晴れなくても、モヤモヤの正体くらいはわかるようになるだろう。ひとりの男性から見て「言い得て妙だ」と感心する記述も多く、本書を読んでいるのと読んでいないのとでは恋愛の有利さに大きな差が出そうだな、と素人ながらに感じた。

 

一方で後半は、恋愛だけに限らない、もう少し広い人間関係全般の話が多くなってくる。もちろん題材はあくまで女性のための恋愛指南なのだけど、ここに書かれているアドバイスはほとんどそのまま男性にだってあてはまるし、もっと言えば人付き合い全般についても十分妥当する話だ。特に5章は、恋愛というよりも個人が他者との関わりの中でどうやって生きていくかという「生き方」の話なので、この章だけ読むと恋愛がテーマの本だとはわからないかもしれない。

 

それもそのはずで、「恋愛」というテーマは実際のところ人間関係の結び方の一種なので、突き詰めていけば最終的には他者とのつきあい方や、他者を通した自己はいかにあるべきか、という話に収斂していく。まあ、世の中にはそこまで話が進まずにスピリチュアルな言説で適当にごまかしている本のほうが圧倒的に多いとは思うのだけど、真剣に恋愛の本質は何かと問い続ければ必然的にそういう話につながるはずだ。本書がそのような構成をとっているのは、著者の桐谷さんがこのテーマと真剣に格闘したことの証左なのかもしれない。

 

このジャンルの本は普段ほとんど読まないので想像になるのだが、本書は恋愛指南本の中では結構珍しい類の本なのではないかと思う。本書は恋愛指南本であると同時にビジネス書でもあり、自己啓発本でもあり、エッセイでもあり、桐谷さんの自伝でもある(自伝成分はそれほど多くないが)。つまり、かなりのジャンル越境型の本なのだ。たとえば、女性向けの恋愛本で大前研一の言葉を引用した本がかつてあっただろうか*1。たぶん、八正道についての解説が載っている恋愛本も過去にはなかったはずだ。

 

むしろ、本書のタイトルで想定されている読者層(仕事や収入面では特に不満がないが、恋愛だけはうまくいっていない女性)から外れる人にこそ、本書をおすすめしたい。きっと、自分の「人とのつきあい方」について、振り返るきっかけになると思う。

*1:余談だが、この直前ぐらいに読んだphaさんの『しないことリスト』にもまったく同じ大前研一の言葉が載っていて大前さんってやっぱりスゴイんだな、と思った。

退職金を目当てに会社にしがみついてはいけない理由

仕事観 転職

こちらを読んで。

cild.hatenablog.com

 

この記事だと、退職金はどんな会社でも正社員であればほぼ確実にもらえるような書き方をしているが、現実にはそういうわけでもない。

 

マクロトレンドとしては、むしろ退職金は廃止の方向に向かっており、それはここ数十年の統計にも如実に現れている。厚生労働省の就労条件総合調査:結果の概況を見てみると、退職給付制度を導入する企業数は平成5年(1993年)をピークに低下の一途を辿っており、直近の調査があった平成25年(2013年)では75.5%まで低下している。つまり、現時点で退職給付金制度がない会社が約4社に1社存在し、しかもそれは今後さらに拡大することが予想されるということだ。

  • 平成元年(1989年):88.9%
  • 平成5年(1993年):92.0%
  • 平成9年(1997年):88.9%
  • 平成15年(2003年):86.7%
  • 平成20年(2008年):85.3%
  • 平成25年(2013年):75.5%

そもそも、この手の退職金という制度自体が終身雇用を前提としていてだいぶ時代に合っていない感がある。今後はますますもらえない会社が増えるだろうから、退職金がもらえないことを理由に会社を辞めないで頑張る、というのは報われない可能性も高いという点でおすすめできない。

 

個人的には、なんのあてもないのに会社を辞めてみたり、専業ブロガーのような労働集約型ビジネスで独立するのはもちろんおすすめできないものの、ひとつの会社にしがみつくのが正しいとは到底思えない。退職金制度が存続するかという話以前に、定年まで会社自体が存続するかすら保証はできない。独立はしないまでも、転職のオプションぐらいはつねに心の片隅に置いておいてもよいと思う。転職の際に「転職先の企業は退職金がないから……」という理由で転職を躊躇するようだったら、それはちょっと感覚が古いと言わざるをえない。

 

長く続いた企業って、そう簡単に潰れるもんじゃない。不確かな未来に舵をきるまえに、立ち止まって考えてみてよ。 

 

たしかに、長く続いた企業はなかなか潰れないかもしれない。しかし、企業自体が潰れないからと言って、自分がずっとそこにいられるとは思わないほうがいい。長く存続している企業は、時代の変化に応じて柔軟に主力ビジネスを変化させられる企業だ。その変化にうまく適応できない限り、会社が存続しても社員ではいられなくなる可能性はある(一昔前に話題になった「追い出し部屋」の類を思い浮かべて欲しい)。気づいたら自分の部門がまるごと他の会社に売り払われたり、最悪の場合リストラに合うことだってあるかもしれない。

 

キャリアを考える上で最近大切だと思うのは、選択肢を多く確保しておき、自分の意志で行動できる余地をつねに持っておくということだ。会社にしがみつくという行為は、そういう点では最悪である。ひとつの会社に腰を据えていると色んなものの予測が正確に立てられて、安全な未来が待っているように見えるかもしれない。しかしそれは実際には錯覚だ。いざという時には今いる会社を離れる可能性を想定ができていないと、いざ問題が起こった時に「しがみつく」の一択しか選択できなくなる。若い人たちは、退職金などという本当にもらえないのかよくわからないお金に行動を制限されるよりも、選択肢を増やし続けることを意識してほしい。