脱社畜ブログ

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「お客様は神様です」という言葉の本当の意味

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本日も、新刊『はい。作り笑顔ですが、これでも精一杯仕事しています。』にページ数の関係で載せることができなかったコラムを掲載します。

 

 

   コラム:「お客様は神様です」という言葉の本当の意味

 

 商売の世界などでは「お客様は神様です」という言葉が使われることがあります。
 この「お客様は神様です」という言葉ほど、世のモンスター消費者を勘違いさせる言葉はないようで、
「おい!客を何だと思ってるんだ!お客様は神様だって教わらなかったのか?」
 などと店員を詰るのに、便利に使われてしまっている光景をよく見かけます。
 実はこの「お客様は神様です」という言葉は、もともとはまったく違う文脈で使われていたもので、接客業の現場などで使うべきフレーズではありません。モンスター消費者はそのことを理解せずに、どこかで聞いた便利なフレーズを自分に都合よく解釈して使っているだけなのです。

 一番最初に「お客様は神様です」という言葉を使ったのは、浪曲師の三波春夫さんだと言われています。
 1961年にある地方都市の体育館で行われた対談の中で、聴衆のことをどう捉えているかと問われた時に、
「うーむ、お客様は神様だと思いますね」
 と三波さんが答えたのがどうやら初出のようです。
 その後、レツゴー三匹という漫才トリオ三波春夫のモノマネをする際に「お客様は神様です」というフレーズを使うようになり、それで日本中に広がったのですが、今ではこの経緯を正しく理解している人はほとんどいません。
 三波さんの言う「お客様」というは、ステージに立つ三波さんの演技を見ている聴衆・オーディエンスのことです。
 三波さんにとってステージで唄うという行為は神聖なものであり、雑念を払って澄み切った心で完璧な芸を見せなければならない、そのために聴衆を神様と見て唄う――というのが「お客様は神様です」という言葉の真意であり、言うならばこれは芸事の心構えです。
 ところが、「お客様は神様です」というフレーズ自体が持っている印象が強かったためか、気づくと本来の芸事の心構えという文脈は無視され、接客業で働く人の心構えのような形となって定着してしまいました。このことには三波春夫さん自身も困惑していたようで、公式ホームページにはこの誤解について言及した文章が掲載されています(https://www.minamiharuo.jp/profile/index2.html)。

 この本をここまで読んできた方なら、接客業において「お客様は神様です」などという標語を持ち出すことがどれだけ間違ったことか、理解していただけていると思います。
 もっとも、日本では八百万の神といった考え方があり、神様と一口で言っても様々な神様がいます。これだけ神様がたくさんいれば、中にはまったく尊敬に値しない、貧乏神や疫病神のようなはた迷惑な神様も存在します。
 接客業の現場で「お客様は神様だぞ!」と怒鳴り込んでくるような消費者は、神様は神様でもこの手の貧乏神か疫病神の類に違いありません。こういった神様に関わっていると、商売はうまくいきませんし、幸せも逃げていきます。
 この手の神様に遭遇してしまったときには、客扱いはせずに、一刻も早く退店していただくのがスマートな対応だと思います。

 

4日連続でお送りしてきたお蔵入りコラムの掲載も、これでいったん一段落となります。ありがたいことに、早くも拙著を読み終えたという方々からチラホラと感想もいただいています。なかなか新型コロナウイルス以外の話題に興味を持ちづらい状況下ですが、そんな中、僕の本を読んでいただいて前向きな感想をいただけることは著者として大変嬉しく思います。

 

引き続き、発売中ですのでどうぞよろしくおねがいします。