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脱社畜ブログ

仕事観・就職活動・起業についての内容を中心に、他にも色々と日々考えていることを書き連ねていきます。

「やりがいのある仕事」という幻想

仕事観 書評
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編集者の方より、本をいただきました。ありがとうございます。

 

 

森博嗣といえば、「すべてがFになる」や「スカイ・クロラ」などが代表作の偉大な作家である。僕は一時期、森ミステリィにドハマリしてそればかり読んでいた時期がある。森ミステリィは理系ミステリィなんて称されることもあって、一応理系の端くれである僕の感覚にはよく合致し、寝食を忘れて没頭していた。僕の知人には、大学院入試の前にうっかり森博嗣にハマってしまって、あやうく試験に落ちかけたという人もいる。

 

本書は、そんな森博嗣による「仕事」に関する本だ。ここでいう「仕事」というのは「作家としての仕事」ではなく、会社に就職して働くといったような、もっと一般的な「仕事」のことである。つまり、本書のテーマは、基本的にはこのブログと一緒だ。

 

テーマだけでなく、考え方まで僕とかなり近い部分がいくつかあって驚いてしまった。中には、自分が書いたのではないかと錯覚するような記述まであり(これは森先生に失礼か)、そのぐらい共感できるところが多い本だった。例えば、以下の記述は本文にも帯にも書いてあるものなのだが、僕はこれと同じことを大学生の時から考え始めて、未だにずっと考えている。

 

人は働くために生まれてきたのではない。どちらかというと、働かないほうが良い状態だ。働かない方が楽しいし、疲れないし、健康的だ。あらゆる面において、働かない方が人間的だといえる。ただ、一点だけ、お金が稼げないという問題があるだけである。

 

社会貢献だとか、やりがいだとか、生きている意味だとかを問い始めて仕事を考えるよりかは、このような「当たり前なこと」を出発点として「仕事」というものを考えていくほうが余程自然だと僕は思っている。しかし、残念ながら我が国ではこういう自然な考え方は異端視される。「働かない方が人間的だ」なんて言ったら、働くことを神聖視している一派から石が飛んでくる。「お金が稼げないから、仕方がなく働いている」ということは、たとえ思ったとしても、口に出してはいけないようだ。

 

一点、本書で特に面白いと思った部分がある。「本当に仕事を楽しんでいる人は、それを殊更他人に語ろうとしたりはしない」といった趣旨の記述があって、なるほどこれは本当にその通りだと思った。「俺は今こんなに楽しい仕事をやっている」とか、「俺は仕事が好きだ」とか、そういうことを外に向けて発信したがっている人を見かけることがあるけど、これは何のためにやっているのだろう。本当に好きだったら他人に自慢をする時間すら惜しいはずで、その時間を仕事にあてたほうがいい。それをわざわざ自慢するということは、本当はそこまで楽しいと思っているわけではなくて、自慢を通して自分自身を納得させようとしているのかもしれない。もちろん、純粋に自慢が好きな人もいるのだろうけど。

 

森先生は、現在仕事量は1日1時間で、あとは「模型製作」に没頭しているという。素敵な生き方だと思う。人生は、やりたいことをやればいい。そして、やりたいことは仕事と関係なくてもいい。自分にとっての「模型製作」が何なのか、それを一度じっくりと考えてみよう、というような気にさせてくれる本である。