こちらを読んで。
この記事だと、退職金はどんな会社でも正社員であればほぼ確実にもらえるような書き方をしているが、現実にはそういうわけでもない。
マクロトレンドとしては、むしろ退職金は廃止の方向に向かっており、それはここ数十年の統計にも如実に現れている。厚生労働省の就労条件総合調査:結果の概況を見てみると、退職給付制度を導入する企業数は平成5年(1993年)をピークに低下の一途を辿っており、直近の調査があった平成25年(2013年)では75.5%まで低下している。つまり、現時点で退職給付金制度がない会社が約4社に1社存在し、しかもそれは今後さらに拡大することが予想されるということだ。
- 平成元年(1989年):88.9%
- 平成5年(1993年):92.0%
- 平成9年(1997年):88.9%
- 平成15年(2003年):86.7%
- 平成20年(2008年):85.3%
- 平成25年(2013年):75.5%
そもそも、この手の退職金という制度自体が終身雇用を前提としていてだいぶ時代に合っていない感がある。今後はますますもらえない会社が増えるだろうから、退職金がもらえないことを理由に会社を辞めないで頑張る、というのは報われない可能性も高いという点でおすすめできない。
個人的には、なんのあてもないのに会社を辞めてみたり、専業ブロガーのような労働集約型ビジネスで独立するのはもちろんおすすめできないものの、ひとつの会社にしがみつくのが正しいとは到底思えない。退職金制度が存続するかという話以前に、定年まで会社自体が存続するかすら保証はできない。独立はしないまでも、転職のオプションぐらいはつねに心の片隅に置いておいてもよいと思う。転職の際に「転職先の企業は退職金がないから……」という理由で転職を躊躇するようだったら、それはちょっと感覚が古いと言わざるをえない。
長く続いた企業って、そう簡単に潰れるもんじゃない。不確かな未来に舵をきるまえに、立ち止まって考えてみてよ。
たしかに、長く続いた企業はなかなか潰れないかもしれない。しかし、企業自体が潰れないからと言って、自分がずっとそこにいられるとは思わないほうがいい。長く存続している企業は、時代の変化に応じて柔軟に主力ビジネスを変化させられる企業だ。その変化にうまく適応できない限り、会社が存続しても社員ではいられなくなる可能性はある(一昔前に話題になった「追い出し部屋」の類を思い浮かべて欲しい)。気づいたら自分の部門がまるごと他の会社に売り払われたり、最悪の場合リストラに合うことだってあるかもしれない。
キャリアを考える上で最近大切だと思うのは、選択肢を多く確保しておき、自分の意志で行動できる余地をつねに持っておくということだ。会社にしがみつくという行為は、そういう点では最悪である。ひとつの会社に腰を据えていると色んなものの予測が正確に立てられて、安全な未来が待っているように見えるかもしれない。しかしそれは実際には錯覚だ。いざという時には今いる会社を離れる可能性を想定ができていないと、いざ問題が起こった時に「しがみつく」の一択しか選択できなくなる。若い人たちは、退職金などという本当にもらえないのかよくわからないお金に行動を制限されるよりも、選択肢を増やし続けることを意識してほしい。