脱社畜ブログ

仕事観・就職活動・起業についての内容を中心に、他にも色々と日々考えていることを書き連ねていきます。

「コロナで強制リモートワーク」が日本の会社にもたらしたもの

以下を読んで、これはなかなか面白いことが起こっているなと思った。

 

togetter.com

 

新型コロナウイルスの影響で、今までリモートワークを「補助的な」ものに位置づけていた企業が、相次いで「全面的な」リモートワークの導入に踏み切っている。もちろん、リモートワークに移行する難易度は業体によって異なるので、今でも普通にオフィスで働いている人たちも多いとは思うが、概してIT系などはリモートワークとの親和性が高く、実際に僕も今はリモートで仕事をしている。

 

リモートワークについては普段から賛成派/反対派による様々な意見を聞くが、こんなにも多くの人が一斉にリモートワークを試すことになったのは、日本ではおそらく初だろう。

 

冒頭で紹介した記事は基本的に肯定的な声だけをまとめたものなので、そういう意味では多分にバイアスがかかっているのだが、それでも喜びの声を読んでいくと面白い。ここで主に挙げられているリモートワークによって得られたメリットには、たとえば以下のようなものがある。

 

  • 満員電車に乗らなくてよい
  • 無駄な会議が入らない
  • 会議が早く終わる
  • 無駄な仕事を振られることがなくなった

 

満員電車に乗らなくてよいというのは、通勤という行為自体がなくなるので当然として、興味深いのは「無駄な会議が入らない」「会議が早く終わる」といった項目だ。

 

ZoomにGoogleハングアウト、Slackコール、Skypeなどなど、ビデオ会議に利用できるツールは山程あるし、実際やってみると画面共有などもできて対面の会議よりも便利だったりするのだが、それでもビデオ会議は「気軽に開催しづらい」「なんだか居心地がよくないのですぐに終わりたい」という印象を利用者に抱かせるらしい。一見するとそれらはビデオ会議のデメリットのように感じらるが、実際にはこれが多くの人にメリットとして受け止められている。日本の会社には無駄な会議が多いという愚痴はよく聞くが、まさかそれがこんな形で解消されることになるとは予想していなかった。

 

思うに、ビデオ会議系ツールはこれまで、できるだけ実際の対面会議に近づけるという方向で進化してきた。カメラを通じて話者の表情が伝わりやすいようにするとか、カレンダーと連携してスケジュールに会議の予定を入れやすくするとか、日に日に便利になってきている。でも、その進化も実はこのぐらいにしておいたほうがよいのかもしれない。これ以上進化して、リアルでオフィスにいる時のように無駄な会議を気軽に開催できるようになってしまったら、逆に生産性は落ちてしまいそうだ。

 

もちろん、「強制リモートワーク」は始まったばかりなので、これが企業活動にどういう影響を与えたかは、もう少し長い期間やってみないと評価を下すことはできないだろう。実際にはデメリットだってそれなりにあるとは思う。それでも、せっかく大規模に実験する機会を得たのだから、この知見はぜひ前向きに活かして欲しいと思う。「コロナが終息したので、今まで通りに戻します」だけで終わってしまい、何も振り返ることなく一夜の夢として終わってしまうのはもったいない。

 

個人的には、コロナ終息後も「週に数日はリモートワークで働く」という習慣を残してみてはいいのではないかと思う。これなら「フルリモートはちょっと」と考えている企業だって気軽に導入できる。たまにはオフィスに行って人と対面で仕事をするのもよいとは思うが、毎日である必要はたぶんあまりない。オフィスの家賃や通勤定期券代は日割りにするのが難しそうなので、コスト面ではデメリットもあるのだが、それよりも生産性向上や社員の健康維持といったメリットのほうが大きいのではないだろうか。

 

全国の社長の皆様は、ぜひ検討を。

 

 

イノベーションを起こすためには、本当に在宅勤務を禁止すべきなのか?

こちらの記事を読んで。


チームラボ・猪子寿之:ヤフーもやめたでしょ。「ノマド」「在宅勤務」を禁止する理由 | BizCOLLEGE <日経BPnet>

 

一理あると思う部分もあるものの、完全には賛成しかねるというのが正直な感想だ。

 

たしかに、ブレストをするというのであれば、skypeなどを使ってオンラインでやるよりも直接顔をつきあわせてやったほうが間違いなくいいだろう。電話で話してもどうもうまく通じないが、会ったらあっさり話が進んだということがよくあるように、物事にはオンラインでいいものと、オンラインでは不都合なものがある。場の雰囲気が結果を左右するブレストは、オンラインでは不都合なものの最たるものだろう。

 

一方で、ではブレストが必要なイノベーティブな仕事をするために、在宅勤務を一律に禁止すべきかというと僕は必ずしもそうとは思えない。いくらイノベーティブな仕事だと言っても、朝から晩までずっとブレストばかりしているわけではないだろう。いくら話し合いをしても、実際につくる時間を確保しなければいつまでたっても製品はできない。元記事で挙げられているiPhoneのインタフェースにしても、本当にエンジニアとデザイナーが「四六時中顔をつきあわせながら」つくったのかどうかはあやしいと思う。たしかに従来型の製品に比べて両者のコミュニケーションは密だったかもしれないが、各々が個人的に作業をする時間が皆無だったとは到底考えられない。そして、こうした「個人的に作業をする時間」を在宅勤務の時間として、たとえば週1回であるとか週2回といったように部分的に充てることは可能なはずだ。頻度は業務内容によって調整すればいいが、週5回、絶対に朝から晩まで会社で仕事をしなければダメだという業務はかなり限られているように思える。

 

たったの週に1回だけでも、在宅勤務が認められれば楽になるという人は多いはずだ。週末がすべて家事をすることで潰れているという人も、週に1回は平日に家のことをこなす時間ができる。もちろん、家では怠けてしまって全然集中できないという人は、会社に行って仕事をすればいい。大事なのは、選択の自由を与えることだ。

 

在宅勤務はチームメンバーと話し合いをするのには向かないが、邪魔されない時間を確保するという点では有効な手段でもある。特にエンジニアの場合、「邪魔されないまとまった時間を確保する」ことは生産性を上げるために重要なことだとよく言われる。会社で一緒のフロアで仕事をして、30分に1回、プランナーやデザイナーにチョコチョコと横から話しかけられたのでは仕事は全然進まない。結局、一番集中して実装ができるのはみんなが帰った後の夜中か休日だったりするのだけど、これは深夜残業や休日出勤を発生させている時点でうまいやり方ではない。在宅なら横からちょっかいを出してくるのは家族か新聞のセールスぐらいなので、これらを遮断する策を講じればひとまとまりの時間はとりやすい。

 

思うに、100%在宅勤務であるとか、100%オフィス勤務というのはいずれも極端な意見である。そもそも、在宅勤務というのは「柔軟な働き方」の代表例なわけで、「全部在宅だけで完結させる」という発想にはその柔軟性がない。まずがっつり対面で話し合って仕様を決め、いざ実装となったら各自好きなように働くというのが実際には柔軟性があって理想的なのではないだろうか。「禁止」という形で完全に在宅勤務を諦めてしまうのはもったいないと思う。

 

ちなみに、在宅勤務による機密漏洩や情報流出のリスクがある、という話はまた別問題だ。そういう事態が強く想定される業務の場合には、たしかに一律禁止もやむをえないだろう。もっとも、在宅勤務ではない職場でも情報流出は起きているので、必ずしも在宅勤務を禁止すればこれらの事故が防げるというわけではない。

 

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