脱社畜ブログ

仕事観・就職活動・起業についての内容を中心に、他にも色々と日々考えていることを書き連ねていきます。

何かをしないと決めることは、何かをすると決めるのと同じ価値がある――『しないことリスト』

編集者の方経由でいただきました、ありがとうございます。

 

しないことリスト

しないことリスト

 

 

本書は『ニートの歩き方』でおなじみのphaさんの3冊目の本である。おそらくphaさんの本の中ではいちばん内容が軽めで、サクサク読み進めるのに向いている。

 

タイトルからわかるように、本書のテーマは「しないこと」を決めるというものだ。はてなブックマークライフハック系の記事を読んだり、あるいは本屋のビジネス書コーナーに行くとわかるが、この世は「◯◯をしよう、◯◯をはじめよう」という前向きなメッセージで溢れかえっている。最近はこれが一周して「断捨離」だとか「ミニマリスト」だとかいう言葉も見かけるようになってきた気がするが、それでもやはり大勢は何かを新しく「する」方向に向いてるし、そういう情報に日々晒されながら生きている人がほとんどだと思う。

 

本書は、そんな「情報が多すぎる時代」に、周囲に流されずに自分の価値観でラクに生きるためにはどうすればいいか、について書かれたものだ。情報洪水という言葉はテレビが登場した時代からあったようだが、インターネットの台頭で情報の量はいよいよ天文学的な数字にまで膨れ上がってしまった。これだけ情報が多いと、その中から本当に自分にとって重要な情報を入手することはかなり大変だ。世の中に氾濫する「◯◯をしよう、◯◯をはじめよう」という情報のひとつひとつに真剣に付き合っていたら、人生自体が終了してしまう。

 

「すべきこと」の選択肢がほぼ無限にある現代では、むしろ自分の価値観に照らした上で「しないこと」を決めていくことが非常に重要になってくる。現代において何かをしないと決めることは、何かをすると決めることと同等、あるいはそれ以上の価値がある。本書に列挙されている「しないこと」のリストは、phaさんが自らの価値観でしないと決めたことであり、その思考プロセスを追うだけでも自分の「しないことリスト」を作る際に参考になると思う。

 

また、これは『ニートの歩き方』や二冊目の『持たない幸福論』にも共通することなのだが、phaさんの本では、他の本が紹介されることが非常に多い。個人的にはこの参考文献リストがいつも楽しみで読んでいる(今回はページの左下に言及と同時に紹介される)。以前、このブログで良質なコンテンツ作成にはIO比が大切という立花隆の意見を紹介したことがあるが(参考:ブログは毎日更新しないほうがいいかもしれない)、そういう意味でもphaさんの本はいつもIO比が高い。

 

「しないこと」を決めよう、という切り口のビジネス書はphaさんの本以外にもたくさんあるのだけど、そういう本は決まって「するな」と断定的だったり、あるいはお説教口調だったりするので個人的には好きになれない。その点、本書はご本人もあとがきでこう書いていることからわかるように、押し付け成分は皆無だ。

 

僕もこの本で「◯◯しない」というのをたくさん書いたけど、自分で書いておいてこんなことを言うのもなんだけど、ここに書いてあることをすべて完璧に実践する人がいたら怖いなと思う。こういうのは適当に読んで、適当に自分に使えそうな部分だけ取り入れて参考にしたらいいものだ。

 

本書を参考に、自分なりの「しないこと」を考えてみるのもいいかもしれない。

 

 

『今すぐ中国人と友達になり、恋人になり、中国で人生を変える本』書評

特に周囲に中国人がいるわけでもなく、中国に旅行に行く予定もないのだけど、本屋で見かけて面白そうだったので買って読んでみた。

 

 

これは想像以上に面白い本だった。

 

本書は「中国嫁日記」でお馴染みの井上純一さんが、自身の体験を元に中国人と友達になったり、恋人になったりするために必要な「考え方」を書いたものだ。日本人ではあまり馴染みのない「身内」という概念を中心に、中国人の人間関係の築き方について色々な角度から書いている。本文は井上純一さんと奥さんの月さんの対談形式で進み、非常にサクサク読み進めることができる。

 

もちろん、本書に書かれている内容がすべての中国人に適応できるわけではないだろう。中国人は〜とか日本人は〜とかいう言説は、「主語が大きすぎる」ので(そもそも、中国の人口13億8000万人なのだから、一括りにできるわけがない)どうしても該当しない部分がでてくるし、「ざっくり」した話になりがちだ。ただ、それでも「国民性」というものはやはり存在するはずで、ひとつの見方として本書の内容には大きな価値があると思う。

 

Amazonのレビューを見ると、本書には「客観的データが欠ける」という意見があったが、それは別に本書に求めるものではない気がする。むしろ、客観的データよりも著者が自らの珍しい立場(中国人と結婚し、中国で暮らし、中国で仕事をしている)において実際に見聞きし、体験し、著者の周囲で起こっていることから抽出された「中国人には、◯◯の考え方をする人が多い」といった知識こそが本書の最大の価値であり、こういう情報は日本に閉じこもってネットサーフィンだけしていては絶対に入手できないものだ。感覚としては、中国で面白い体験をしている人と一緒に飲みに行って、色々と普段聞けない話を聞けた、といったような読後感を味わうことができた。

 

本書の内容がどこまで実践的かは、もう実際に中国に行って中国人の友達を作り、さらには中国人と恋人になって人生を変えることで確かめていくしかないだろう。きっとその過程で本書に書かれていない新しい事実も、色々とわかってくるに違いない。そうなったらぜひ、何らかの形でその情報を発信して欲しい。「体験に基づいた情報」を求めている人は、世の中に必ずいる。

 

個人的には、「あとがき」の内容が心にしみた。中国嫁日記、と合わせてぜひどうぞ。おすすめです。