コンサルティングファームのBoston Consulting Groupが開発した、BCGマトリックスというものをご存知だろうか。事業ポートフォリオを考える際に利用される図で、以下のようなものである。
自社が扱っている製品(事業)をこのマトリクスのどのポジションに当てはまるかを考えることで、事業分析を行うのに利用される。それほど大した話ではない。BCGマトリクスについて詳細に解説するのはこのエントリの趣旨から外れるので割愛するが、気になった人は検索してもらえば解説は山ほど出てくる。
今日は、このBCGマトリクスを、職業選択に引き直したものを考えてみたのでちょっと紹介したい。題して、「職業選択マトリクス」である。といっても、これも大した話ではない。可処分所得と可処分時間の関係について、一般的によく言われていることを図にしただけである。可処分時間は仕事の忙しさに関連し、仕事が忙しいほど少なくなる。可処分所得は給料に関連し、高級なほど多くなる。
就職先を検討する際には、自分の就職先がこのマトリクス上のどのポジションに位置するものなのかを、考えてみるとよい。自分の望むライフスタイルにあわせて、可処分時間と可処分所得を調整することは、生きることの基本である。
さて、ここまでは当たり前すぎることなのだけど、問題は日本の場合、このマトリクスの左下(便宜上「ブラック」と命名させてもらった)に位置する会社群があまりにも多すぎるということである。職業選択の際に、こういったマトリクスを考えれば誰もこんな損をするポジションに就こうとはしないはずなのだけど、実際には「忙しいし、給料も少ない」という条件での求人は後を絶たないし、そういう会社に間違って入ってしまう人も多い。
なぜこうなるのか、原因は複数あると思われるが、日本の場合は、就職の時点で上のようなマトリクスではなく、下のような一次元の、非常にお粗末な指標によって職業を選ばせようとする価値観が大勢を占めているから、というのが原因のひとつではないかと僕は思っている。
例えば、企業の説明会に行って「給料がどのぐらいもらえるのか、どういった感じで上昇していくのか」とか「毎日何時に帰っているのか、残業はあるのか」といった質問を堂々とすることは基本的にはばかられる。そして、企業側もそういった情報をはっきり開示しようとはしてこない。一方で、「やりがい」関連の質問には嬉々として答えるし、パンフや会社のページにはそういったやりがい系の記事が満載だ。「どれだけの時間を投入して、どれだけの報酬がもらえるか」といった仕事の最も基本的な部分が曖昧なままで、「やりがい」のような言ってみれば副次的なものが全面的に出されてしまう現状は、いかがなものかと思う。
職業を選択する際には、せめてその仕事がマトリクスのどのポジションに存在するのかは、事前に知っておきたいものである。

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