「社会人」という言葉について、よく考えてみてもらいたい。この言葉に、僕はものすごく違和感を感じる。
社会人という言葉は、字義通り解釈すると「社会の一員」ということになるだろう。しかし、現実には社会人とは「定職についている人」を指す言葉として使われる。学生は当然入らないし、フリーターも社会人としてみなされない場合が多い。
この、学生やフリーターが社会の一員ではない、という捉え方はおそろしく乱暴だと僕は思う。学生やフリーターだって、人に会うし、物も買う。お金も稼ぐ。立派に社会生活を営んでるじゃないか。山奥に一人でこもって狩猟採集民のような生活でもしていない限り、人はみんな社会人のはずだ。
むしろ、この言葉は正社員として就職して働かなければ社会の一員ではない、といった狭量で差別主義的な思想によって支えられている。「社会人としては失格」や「社会人なら◯◯するのは常識」といったテンプレ表現は、単なる生きるための手段に過ぎない労働を、過度に崇高なものにして、それができない人を必要以上に責めるために使われている。
だから、今まで使われていた「社会人」という言葉は、今後「社畜」とか「会社の奴隷」とかいう言葉に置き換えたほうがいいんじゃないかと僕は思う。そうすれば、無茶苦茶なことを言っているのがすぐにわかるからだ。理不尽なことを「社会人の常識」というお決まりの表現で強要されることもなくなるだろう。
社会人になる、というのは本来ものすごくハードルが低いことのはずだ。人の物を盗まないとか、夜中に大きな声を出さないとか、そういう最低限の社会のルールさえクリアできれば、立派に社会人を名乗っていいと僕は思う。
- 作者: 北原保雄,いのうえさきこ
- 出版社/メーカー: 大修館書店
- 発売日: 2004/12/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 14人 クリック: 122回
- この商品を含むブログ (179件) を見る