例えば、あなたがある日本の会社に勤めているとしよう。ある日、朝起きたら体がものすごく重い。どうやら、風邪の引き始めらしい。熱を測ったところ、熱はまだ無いようだ。そこで、早いうちに治そうと考え、会社に今日は休みたいという旨を連絡したとする。
これで、あっさりと休める会社ならまだいい。しかし、そうでない会社も多い。「学生じゃないんだから、そんなちょっとしたことで会社を休まれたら困る」とか、「お前が勝手に休むと、しわ寄せが他のところに行く」とか、「社会人として、しっかり体調管理をするのは当然」とか、辛辣な言葉が返ってくる場合も少なくないだろう。
どうして日本の労働環境はこうも劣悪なのだろうか。会社員は奴隷ではないのだから、体調が悪い時にぐらい休ませて欲しいと思うのが人情である。体調管理できない奴は云々と言うのも、死人にムチを打つようで最悪だ。病気の人にやさしい言葉がかけられない人は、社会人以前に人間としてどうかしている。
欧米では、シック・リーブという制度がある。これは、病気の際に会社を休むために、有給休暇とは別に付与される休暇である。これなら風邪で会社を休んだとしても、有給休暇は減らないし、これが毎年付与されるということは、人間は病気になりうるということを、事前に了解しているということである。
「社会人は体調の自己管理をして、休んで他人に迷惑をかけないようにしろ!」という精神論の100年先は進んでいる感じがする。人間なんだから、病気にだってなるだろう。それを最初から想定せずに、仕事の計画を立てたり、組織を運営しているのだとしたら、それは会社のほうが間違っている。
間違った会社の言い分に、耳を貸してはいけない。違和感を感じなくなったら終わりだ。
- 作者: 安田 修
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