数日前、経済協力開発機構(OECD)が「よりよい暮らし指標(Better Life Index:BLI)」の最新版を発表した。この指標は、「住宅」、「収入」、「雇用」、「コミュニティ」、「教育」、「環境」、「ガバナンス」、「健康」、「生活満足度」、「安全」、「ワークライフバランス」の11分野の指標を使って、国別に国民の「幸福度」を測るものなのだけど、今回、日本の総合順位は21位だったそうである。
日本の幸福度、21位 OECD調査
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM28072_Y3A520C1FF2000/
注目すべきは、「ワークライフバランス」(仕事と生活の調和)の順位で、これは34位とかなり低い。記事には「余暇や睡眠、食事の時間が平均を下回ったことが響いた」とあり、まぁ日本人の働き方を見ていたらそうだよね、と思わずにはいられない。不名誉なことである。
もうひとつ、さらに前のものだけど、これも国際的に見て大変不名誉なニュース。
「日本は過労死対策を」 国連委員会が政府に初勧告
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2305K_T20C13A5CC1000/
「KAROSHI」自体は英語の辞書にも載って世界的にも有名だというが、国連から勧告を受けたのはどうやら今回が初らしい。いよいよ、世界的にも見過ごせないレベルに到達しつつある、ということだろうか。何度も繰り返すが、不名誉である。
僕は、この手の「外国とくらべて」とか「グローバルスタンダードでは」という議論が本当はそんなに好きではない。「みんなこうしてるから合わせましょう」というのはそもそも乱暴だし、国によって育んできた文化は異なるわけなので、合わせられないものもある。例えば捕鯨問題のように、国際的な方向性が決まっていたとしても議論したほうがいい問題はあるだろう。
ただ、日本の労働環境についていえば、日本人でも「これでいいのだ」と心から思っている人はほとんどいないだろうと思う。「仕事のせいで余暇や睡眠、食事の時間が無くなる」とか、「仕事に殺される」という状況について「これは俺達の文化なんだ、ほっといてくれ」という態度を積極的に取りたい人は基本的にはいないだろう。「サービス残業は日本の文化」というのは冗談としては面白いけど、そんなこと本気で言っている人がいたら正直引く。
みんなおかしいとは思っているはずなのに、そういうおかしいことがまかり通っているというところに、日本の労働問題の難しさがあると思う。酷い状況からは抜け出すべきだと思うが、自分以外の他の誰かだけ抜け出すという状況が許せない。だから、抜けようとする人がいると、その人の足を引っ張る。結果、全員が抜けられない。そんな同調圧力による足の引っ張り合いが、世界が驚く日本の「労道」を作り出しているんだろう、という話はたびたび書いてきた。
そういう意味では、非常に情けない話であるが、この手の「外からの力」は有効なのかもしれない。自分たちで問題を認識しておきながら、自分たちでは変えられないというのは、独立国家としてどうなんだろうか、という気にもなるのだけれど。

- 作者: 谷本真由美(@May_Roma)
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