何の分野でもいいのだけど、ある分野の勉強を新しく始めようと思ったら、一番最初に入門書を買うという人は多いと思う。本屋に行ってその分野の棚を見ると、余程マイナーな分野では無い限り、入門書は見つかる。それなりにメジャーな分野であれば、それこそ数えきれないぐらい入門書が存在する。例えば、AmazonでC言語の入門書をさがすと、比較できないぐらい本がたくさん出てきてどれを買えばよいのか迷ってしまう。
ではその膨大な山の中から自分にあった入門書を選び、それを読み終えて次のステップに進もうと思ったとする。同じように独学をするなら、次は中級者向けの本をさがすことになると思うのだが、大抵の場合中級者向けの本の数は入門書に比べるとぐっと減る。上級者向けの本になると、さらに少なくなる。ちょうど、ピラミッドのような形で、上に行けば上に行くほど、勉強のための教材は見つけられなくなる。
このような状況が生じる理由はとっても簡単だ。まず、市場規模で見た場合、入門者の市場と上級者の市場では、入門者の市場のほうが一般的には大きい。誰もがはじめは初心者だが、全ての初心者が上級者になれるとは限らないからだ。また、上級者向けの本というのは誰でも書けるわけではなく、その分野での高度な専門知識が要求されるため、そもそも書ける人の数も少ない。そういうわけで、本屋には入門書が溢れかえり、上級者向けの本はほとんど存在しないという状況が生じる。
もちろん、これは対象分野のそもそもの市場の大きさにもよる。例えば、大学受験のように全体の市場が大きい分野では、上級者向けの本であっても本屋でよい本を入手することができる。英語の本も、市場が(相対的には)大きいので例えばTOEIC満点を狙うための本のようなものも、比較的簡単に本屋で買える。それでも、基本的には入門書のほうが多くて、上級者向けの本ほど少なくなるというピラミッド構造はそのままだ。
そういう意味で、何か新しい分野の勉強をしようと思った場合、「入門はとても易しいが、それを極めるのは難しい」と言うことができる。入り口のほうはよく手入れが行き届いていて、舗装された道をそのまま歩けばいいようになっているが、先に進むに従って舗装はなくなり、最後の方はもう道を自分で切り開きながら進んで行かなければならなくなる。何かを極めるというのは、本当に難しい。
それゆえに、「達人」というのはすごい存在だと僕は思う。僕は飽きっぽい性格で、一つのことにずっと集中することがあまり得意ではなかったので、色んなものに入門をしてはしんどくなったら辞める、ということを繰り返してきて、あまり物事を極めることがなかった。大学生のころに、幅広く色んなことが勉強できたのは面白かったと思う反面、もっとひとつの分野をしつこく勉強し続けてみてもよかったのではないかと後悔もしている。
今後も「達人」には敬意を払いたい。そしていつか、自分も何でもいいから極めるものを持ちたいと思っている。
以上は、「達人プログラマー」を読んでなんとなく思ったことだ。「達人プログラマー」の内容とはあんまり関係がないのだけど、一応。
- 作者: アンドリューハント,デビッドトーマス,Andrew Hunt,David Thomas,村上雅章
- 出版社/メーカー: ピアソンエデュケーション
- 発売日: 2000/11
- メディア: 単行本
- 購入: 42人 クリック: 1,099回
- この商品を含むブログ (347件) を見る