本屋のビジネス書コーナーに行くと、「自分を変える」とか「◯◯の習慣を身につける」とか、そういう本がいつもたくさん置いてある。たくさん置いてあるということは、それはそういう本が人気でよく売れているということを意味している。
注意が必要なのは、この手の本は「テーマが重複している」のにも関わらず「ずっと売れ続けている」ことだ。それこそD・カーネギーの『道は開ける』とかスティーブン・R. コヴィー『7つの習慣』以来、色んなタイプのものが出ては、飽きられることなく消費されつづけている。
仮に、『自分を変える◯◯』みたいな本が10万部ぐらい売れたとしたら、その10万人はもう自分を変えることができたので、もう次に「自分を変える」というテーマの本を出してもこの10万人は買わない……というようには普通ならない。やはり、同じような人たちが同じような本を買う。むしろ、ビジネス書市場や自己啓発本市場は、そういった人たちに支えられていると言ってもいい。つまり、「自分を変えたいという思いはあるけれど、本を読んでも結局は自分を変えることができない人たち」がお得意様というわけだ。
これはなんとも皮肉な話だ。メイロマさんこと谷本真由美さんが、昨年ぐらいに『キャリアポルノは人生の無駄だ』という本を出していたけど、こういう状況ではこの手のビジネス書や自己啓発本が「キャリアポルノ」と不名誉な名前で呼ばれてしまってもしかたがないのかもしれない。
しかし逆に言えば、ビジネス書や自己啓発本を読んで本当に自分を変えることができたのであれば、それは超すごいということになる。大半の人は、本を読んだらそれでおしまいで身につかずに終わると考えると、本当に内容を身につけることができれば他人にかなりの差がつけられるということになる。
そう考えると、大事なのは「ビジネス書の内容」よりも「ビジネス書の内容を読んでそれを身につける方法」のような気がしてきた。そういうメタなビジネス書があったら面白いんじゃないか……と思ってAmazonをちょっとさがしてみたら、既にそういうテーマの本がいくつかあった。やはり考える人はいるものだ。

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個人的には、「ビジネス書を何冊も読む」という行為そのものが結構イケてない気がしている。受験勉強で、闇雲に何冊も参考書や問題集を買い漁るのにそっくりだ。とりあえず読書メモだけ作って満足するのは、ノートまとめをしてそれで勉強した気になってしまうのに似ている。ビジネス書を何冊も浅く読み漁るよりは、信頼のおける本に集中してその内容を何回も繰り返し読んでしっかり定着させるのが、一番シンプルで確実な方法なのではないかなあ、と思う。まあ、僕自身は実践したことがないので説得力がないのだけど。